2012年1月12日(月)
16:20 - 17:50
2011年東北地方太平洋沖地震津波の水位観測データに基づく波源の逆解析
講演者:高川 智博氏
(港湾空港技術研究所 研究官)
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震津波を対象に,GPS波浪計や海底水圧計など水位観測データから津波の初期波形を求める逆解析を行なった。逆解析では,震源周辺に緯度・経度10分間隔の格子を設定し,各セルの水位に単位変位を与え,これを単位津波として線形長波方程式に基づく津波伝播計算を行なう。実際の観測で得られた波形データがこれら単位津波伝播計算で得られた擬似観測データの重ね合わせで与えられるものとして,単位津波ごとの重みを求めることにより,津波の初期状態を推定した。その結果,津波波源の極大点が震源から東方向に極大点が移動し,その後海溝軸に沿って北向きに移動する津波波源の発達過程が復元された。また,この地震発生時には広い領域で地盤変動が生じたため,水位観測データそのものに地盤変動の影響が含まれており,津波の予測誤差を拡大する結果となった。ここでは初期波形の逆解析の結果とともに,地盤変動量を最適化パラメータとして加えることで,水位観測データそのものから地盤変動の影響を推定し,予測精度を上げる試みについても紹介する。
世話人:村越 直美(物質循環学科)
講師の研究分野(研究テーマ):2011年東北地方太平洋沖地震津波,逆解析,地盤変動,波源
2011年12月20日
4:20PM - 5:50PM
タイトル:多様体の三角形分割問題と基本予想(曲がった空間を多面体で捉える)
講演者:山口 祥司 氏
(東京工業大学大学院理工学研究科
)
多様体とは一般相対性理論の舞台にもなる曲がった空間を表す数学の研究対象である。位相幾何学(トポロジー)と呼ばれる研究分野では、四面体と球面を同一視する視点から曲がった空間を多面体の組み合わせで捉えようとする試みがなされてきた。高次元の多面体とは何なのか、高次元の空間は私たちの住む3次元の世界と同じように認識できるのかという問いに対し、1920年代から1980年代にかけて位相幾何学の研究は大きく進展した。4次元以上の目に見えない空間が、私たちの住む3次元空間とは異なる世界であると明らかにされていった経緯を紹介したい。
会場:理学部A棟4階 数理自然情報合同研究室
2011年12月5日
4:30PM - 6:00PM
タイトル:交通流モデルと超離散化
講演者:宇治野 秀晃 氏
(群馬高等専門学校
)
微分方程式を数値的に扱う際には,独立変数を離散化して,微分を差分に置き換えることは,よくご存知のことと思います。超離散化というのは,大雑把に言うと,独立変数だけでなく,従属変数も離散化して,連続な世界の住人である微分方程式をフル・デジタルな世界の住人であるセルオートマトンへと写す手法です。交通流の分野では,渋滞形成過程を理論的に再現する様々な数理モデルが提案されており,それらのモデルには,微分方程式で記述される最適速度模型や,セルオートマトンで記述されるスロースタート模型など,住む世界の異なる様々な形のものがあります。本講演では,連続の世界とフルデジタルの世界の橋渡しをする超離散化の手法を用いて,形の異なるこれら2つの交通流モデルの複合模型を構成し,現実の交通流でも観測されている渋滞の特徴を,複合模型が捉えていることをご紹介します。
会場:理学部A棟4階 数理自然情報合同研究室
2011年10月28日
4:30PM - 5:30PM
タイトル:微分コホモロジーとコホモロジー作用素
講演者:五味 清紀 氏
(信州大学理学部数理・自然情報科学科
)
微分コホモロジー(differential cohomology)とは, 一般コホモロジー理論を, 多様体の微分形式の情報を付け加えるように拡張したものです. 本講演では, 奇数次数微分コホモロジー類の二乗をとる操作が定める写像が, 古典的なコホモロジー作用素を通じて分解するという結果を, 常コホモロジーとKコホモロジーの場合に説明します. 前半は専門外の人向けに説明し, 後半により詳しい内容を説明する予定です.
会場:理学部A棟4階 数理自然情報合同研究室
2011年7月20日
4:30PM - 5:30PM
タイトル:ヤング図形の時間発展とスケール極限
講演者:舟木 直久 氏
(東京大学大学院数理科学研究科
)
ランダムなヤング図形のサイズを大きくするとき,ある種のスケール変換の下で一定の形が見えてくることが知られている。講演では,対応する動的モデルを導入し,その時空のスケール極限について論ずる。
会場:理学部A棟4階 数理自然情報合同研究室