2014年3月14日
2:00PM - 3:30PM
水素同位体の量子分子篩-分子シミュレーションによるアプローチ-
講演者:田中秀樹氏 (京都大学大学院工学研究科 講師)
水素(H)の安定同位体である重水素(D)は,重水素化医薬品,LSIの長寿命化,光ファイバーの透過率向上など様々な分野での応用が期待されているが,化学的性質の極めて似通った水素と重水素を分離することは難しく,その分離プロセスは高コストとなることが知られている。しかし,質量の小さな分子では,低温下においてその波動性を無視することができなくなる(量子力学的効果)ことを利用するならば,H2分子とD2分子における物理化学的性質の違いを際立たせることができる。つまり,D2分子よりも質量の小さなH2分子では,熱ド・ブロイ波長が長くなり,その有効分子径が大きくなることから,極微細な細孔を有する多孔質材料を用いることでH2とD2をふるい分けることが可能となる。これが「量子分子篩(ふるい)」の概念である。
 我々は,この量子分子篩を実現する多孔質材料を探索・創製することを目的とし,分子シミュレーションを用いた検討を進めている。
 本講演では,そのシミュレーション手法と,量子分子篩材料として有望である ことが明らかとなった,いくつかの多孔質材料について紹介をしたい。
キーワード:水素同位体分離,量子力学的効果,吸着,分子シミュレーション
世話人:飯山 拓氏 (化学科)
会場:数理・自然情報合同研究室


2014年2月5日
2:00PM - 3:00PM
Maximal Regularity of Periodic-in-Space Stokes Equations in Weighted Spaces
講演者:Jonas Sauer氏 (Darmstadt工科大 / 早稲田大学理工学部)
アブストラクト: We investigate maximal regularity in $L^q(G)$-spaces of the abstract Stokes operator $\mathcal{A}_{G,q}$ in the locally compact abelian group $G:=\R^{n-1}\times T$, where $T$ is the one-dimensional torus and the abstract Stokes operator is defined in an obvious way on $L_\sigma^q(G)$. This is achieved by using abstract harmonic analysis in order to establish a concept of the class of Muckenhoupt weights $A_p(G)$ similar to (and including) the classical concept in the setup of $\R^n$. In fact, this concept carries over to a much larger class of locally abelian groups. With the Muckenhoupt weights at hand, we proof a group version of the extrapolation theorem, corresponding to the classical extrapolation theorem due to Garc\'{i}a-Cuerva and Rubio de Francia [1]. Using this, we show the $\mathcal{R}$-boundedness of the operator family $\lambda(\lambda-\mathcal{A}_{G,q})^{-1}$ in the weighted space $L_{\omega,\sigma}^q(G)$ of solenoidal vector functions.
The group ansatz also furnishes us with unique solvability of the linear Stokes equations in $G$ even for non-homogeneous divergence data.
[1] {\it Garc{\'{\i}}a-Cuerva, J. and Rubio de Francia, J. L.}: Weighted norm inequalities and related topics. {\it North-Holland Publishing Co., Amsterdam}, Volume 116, 1985
世話人:谷内 靖氏
会場:数理・自然情報合同研究室


2014年1月31日
4:20PM - 5:50PM
地層に時間目盛りを入れる-ルミネッセンス年代測定法-
講師:北沢俊幸氏 (立正大学地球環境科学部環境システム学科 助教)
  例えばページ番号の入っていない分厚い資料は使いづらいしバラバラになるのも嫌なので,ページ番号を記入したい。整理されて使い易くなるだろうし,もしかしたら乱丁や落丁が見つかるかも知れない。地層の年代測定とはそのようなもので,ページのように積み重なった地層になるべく正確に沢山の時間目盛りを入れたいという欲求である。数百年~数十万年前までの年代測定が可能であり,第四紀地質学,自然地理学,考古学などで利用が広がりつつあるルミネッセンス年代測定法は,鉱物に蓄積した放射線量を光や熱などの励起によって発する光(ルミネッセンス)の強さから求め,年代に換算するものである。他の多くの年代測定法が,測定対象となる物の「発見」が必要なのに対して,ルミネッセンス年代測定法は測定したい部位を「選定」できるのが大きな特長である。つまりその気になればページ1枚1枚に番号を記入できるかも知れないのである。本講演では原理,測定例,3.11津波への適用,問題点などについて話題を提供する。
キーワード:地層,年代測定,ルミネッセンス
世話人:村越直美氏 (物質循環学科)
会場:数理・自然情報合同研究室


2013年12月17日
3:30PM - 5:00PM
弦が見る時空-プランクスケールの幾何学-
講演者:綿村 哲 氏 (東北大学大学院理学研究科 准教授)
 量子論と一般相対論が統一されるとき,理論が何らかの変更または一般化をされなければならないことは,様々な議論からもはや疑う余地はない。 特にプランクスケールでの時空の描像は我々の日常的な経験とは大きく異なると考えられる。 では,統一理論の最有力候補の超弦理論では,どのように時空が見えるのだろうか。このトークでは,非可換幾何学や一般化幾何学といった理論の発展で理解されつつある,弦の見ているプランクスケールの時空について議論する。
キーワード:弦理論,量子重力
世話人:小竹 悟氏 (物理科学科)
会場:数理・自然情報合同研究室


2013年11月15日
4:20PM - 5:50PM
マツ材線虫病(松枯れ)における病原線虫と媒介昆虫の 相互関係および病気の分布拡大の解析とモデル
講演者:富樫 一巳 氏 (東京大学大学院農学生命科学研究科 教授)
 松枯れはマツノザイセンチュウの感染によって起こり,それをマツノマダラカミキリ成虫が伝播する。枯れたばかりのマツに媒介昆虫が産卵し, 幼虫は内樹皮を食べて発育する。病原線虫は枯れたマツの中で増殖する。翌年には線虫を持った 媒介昆虫の成虫が木から出てきて健全なマツの枝の樹皮を食べる。枝の傷口から病原線虫は樹体内 に侵入して感染環は完成する。病原線虫と媒介昆虫は相利共生関係にあると言われるが,病原 線虫は媒介昆虫の気管に入って運ばれるため,個体レベルでは必ずしも相利共生ではない。線虫 の伝播経路は複雑であり,線虫の存続を助ける。松枯れの始まった林ではマツの発病率と昆虫密 度には正の相関が見られる。林内の発病木の時間的空間的分布の特徴は,媒介昆虫の個体群調 査と実験室の研究から推定され,モデルによって再現される。さらに,林内の媒介昆虫個体群の 動態モデルと長距離飛翔分布を結び付けたモデルによって,長距離飛翔個体の割合が0から高くな るにつれてと,病気の感染地の拡大速度は増加し,6-7km/年に達するが,割合がある値を超えると 速度が急に低下することが示される。セミナーではこれらの研究を紹介する。
キーワード: 伝染病,松枯れ,マツノマダラカミキリ, マツノザイセンチュウ,マツ材線虫病
世話人:藤山 静雄氏 (生物科学科)
会場:数理・自然情報合同研究室


2013年10月17日
4:20PM - 5:20PM
私はだあれ?-日常生活で使われる暗号技術の紹介-
講演者:伊豆 哲也 氏 (株式会社富士通研究所 ソフトウエア技術研究所・主任研究員)
暗号技術は,古代ギリシャ時代から最近に至るまで主に軍事目的で使われてきましたが,インターネット時代を迎え,現代では日常の暮らしに必須な技術となっています。本講演では,認証技術(他人に対して自分が自分であることを信用させる技術)を例として,どのような暗号技術が利用されているか,その原理はどうなっているか,その安全性と数学がどのように関わっているか,それでも生じる課題は何か,さらには企業の研究開発とどのように関わっているか,などを紹介します。
キーワード: 暗号技術,認証,トークン,パスワード,生体認証
世話人:沼田 泰英氏
会場:数理・自然情報合同研究室


2013年10月17日
5:50PM - 6:30PM
公開鍵暗号の安全性と数学問題の困難性について
講演者:伊豆 哲也 氏 (株式会社富士通研究所 ソフトウエア技術研究所・主任研究員)
送信者から受信者にメッセージを暗号化して送信する場合,送信者は受信者の暗号鍵によって暗号化し,受信者は自分が秘密に保持する復号鍵によって復号して元のメッセージを入手します。公開鍵暗号は,受信者の暗号鍵は誰でもアクセスできるように公開されているという顕著な特徴を持ちますが,この特徴は数学的問題の困難性に依存しています。本講演では,現代の公開鍵暗号において使用されるいくつかの数学的問題(素因数分解問題・離散対数問題・格子問題・多変数多項式問題等)と,その難しさについて紹介します。
キーワード: 公開鍵暗号,素因数分解問題,離散対数問題,格子問題,多変数多項式問題証
世話人:沼田 泰英氏
会場:数理・自然情報合同研究室


2013年6月21日
4:20PM ~
2次元複素空間形の実超曲面について
講演者:昆 万佑子 氏 (信州大学教育学部)
複素空間形の実超曲面に対しては,これまでにも豊富な結果が得られているが,その多くが複素空間形の複素次元が3以上であるという条件が課されていた.最近構成されたIvey, Ryanによる2次元複素空間形の実超曲面の具体例を紹介し,その具体例に関わる分類定理を述べる.
 さらに,複素空間形の実超曲面に対する一般的な条件であるHopfの条件を拡張し,構造ベクトル場がリッチテンソルの固有ベクトル場であるという条件のもと,リッチテンソルに関するいくつかの分類定理を得た.特に,2次元複素空間形の実超曲面に対する結果を述べる.
会場:理学部A棟4階 数理・自然情報合同研究室


2013年5月13日
4:30PM - 5:30PM
非局所コンパクト群の解析的側面
講演者:松澤 泰道 氏 (信州大学教育学部)
局所コンパクトでない位相群はHaar測度を持たず、研究が難しくなります。本公演ではそのような位相群の中でも、Polish群と呼ばれる、適当な可算性を持つ群の解析的側面についてお話しします。
会場:理学部A棟4階 数理・自然情報合同研究室