2015年2月27日
14:00 - 15:00
Optimal initial value conditions for the Navier-Stokes equations
講演者:Reinhard Farwig氏 (Darmstadt工科大)
T.B.A.
世話人:谷内靖
会場:数理・自然情報合同研究室(理学部A棟4F西端)


2015年2月20日
16:20 - 17:50
量子統計-統計学と量子物理学の新たな融合-
講演者:田中 冬彦氏 (大阪大学大学院 基礎工学研究科 准教授)
 通常の統計学はマクロな世界を対象としていますが,タイトルにある量子統計は,量子力学が関わってくるミクロの世界を対象とした統計学です。統計学は数理的な側面とニーズにこたえる実学の側面があり,両者が相互に刺激しあって発展してきました。量子統計もこの基本思想は変わりません。本講演では主に量子力学や統計学に詳しくない人を想定して,発展途上である量子統計の雰囲気を伝えたいと思います。具体的には数理的な興味に基づく諸結果と,最新の量子物理実験でのニーズにこたえる成果を紹介します。前者はたとえば統計学で有名なクラメル・ラオ不等式の量子版が挙げられます。後者については量子スパース推定をとりあげます。国内ではあまり知られていませんが,大規模な行列を推定する量子状態トモグラフィではスパース推定(ベクトルや行列のほとんどの成分が0として各成分を推定する統計手法)が威力を発揮します。量子スパース推定はすでに海外の実験で使われ始めています。また,私たちは統計学と量子物理学の接点となるべくQ-statsという研究者ネットワークを作りました。数理科学研究センターの趣旨を鑑みてQ-statsの活動内容も紹介します。
キーワード:統計学, 量子情報理論, 量子トモグラフィ, クラメル・ラオ不等式, フィッシャー情報量, スパース推定
世話人:沼田泰英(数理)
会場:数理・自然情報合同研究室(理学部A棟4F西端)


2015年2月6日
10:40 - 12:10
直線配置の数え上げ幾何とベッチ数
講演者:阿部 拓郎氏 (京都大学大学院工学研究科 講師)
 直線配置とは,実平面中の直線の有限族のことをいう。まず,n本の原点を通る直線からなる配置を考えよう。これに新しい直線Lを加えるとき,L上に交点はいくつ出来うるだろうか? これは高校生でもわかる問いで,答えは1,n-1あるいはnのいずれかである。ではこの問いと答えを,一般の直線配置に拡張することは可能だろうか?実は上の問いを『交点数は1とn-1の間の整数を取れない』と書き直すことで、同様の定式化が可能である。そしてこの1とn-1は,直線が実平面をいくつの連結成分に分割するか,あるいは直線配置の補空間の複素化のベッチ数と深く関連していることがわかる。しかもこの事実は,代数幾何的な手法を用いた証明のみが知られている。本講演ではこのような,直線配置の数え上げ幾何が,補空間の組み合わせ論あるいは位相幾何と,代数・代数幾何を用いて結びつけられるいくつかの結果を紹介する。
キーワード:直線,交点,ベッチ数,補空間の連結成分,対数的ベクトル場,分裂型,自由直線配置
世話人:沼田泰英(数理)
会場:数理・自然情報合同研究室(理学部A棟4F西端)


2015年1月28日
16:20 - 17:50
量子ウォークの諸性質
講演者:瀬川 悦生氏 (東北大学大学院 情報科学研究科 准教授)
 量子ウォークはランダムウォークの量子的類推の数理モデルとして,1990年前後に何人かの研究者によって考案された。そして2000年の始めに空間構造上での量子探索アルゴリズムの中での効能や,ランダムウォークにおけるガウス分布に代わる量子ウォーク特有の分布への収束が示されて以降,分野横断的に現在でも活発に研究がされている。この講演では,主に量子ウォークの特有の統計的性質である線型的拡がりと局在化について紹介する。線型的拡がりとは,対称ランダムウォークの拡散的な拡がりよりも時間に関して2乗のオーダーで拡がることを意味し,局在化は無限グラフにおいて長時間でもある場所の確率が正の値で残ることを言う。この相反する二つの性質が共存することを,幾つかの結晶格子,無限ツリーの場合等に関して,背後にあるランダムウォークからのスペクトル写像等を用いて紹介する。また,単位円周上のローラン直交多項式間の5項の漸化式を与えるCMV行列と呼ばれるものと量子ウォークとの関係についても述べ,それを用いて量子ウォークのある統計的性質とローラン直交多項式のセゲークラスとの結びつきについても紹介する。
キーワード:量子ウォーク, 固有値写像, CMV行列
世話人:沼田泰英(数理)
会場:数理・自然情報合同研究室(理学部A棟4F西端)


2015年1月23日
16:20 - 17:50
陸域生態系をめぐる温室効果気体とエネルギーの流れ―数理でつなぐスケールの溝―
講演者:植山 雅仁氏 (大阪府立大学 生命環境科学研究科 助教)
 陸域生態系は光合成、呼吸、蒸発散といった様々なプロセスによって、地球システムをめぐる二酸化炭素や水蒸気、また熱エネルギーの循環に大きく寄与している。生態系をめぐる物質やエネルギーの循環は、個葉や微生物といったミクロなスケールでの現象から、群落や流域、また大陸や全球といったマクロなスケールでの現象まで、様々な時間・空間スケールの異なるプロセスが介在している。生態学的観測、微気象観測、衛星リモートセンシングなどの得意とする時間・空間スケールが異なるツールを数理モデルでつなぐことで、生態系をめぐる温室効果気体やエネルギーの流れの一端を解き明かすことができる。本講演では、群落微気象モデル、生態系プロセスモデル、機械学習といった数理モデルを用いた生態系の温室効果気体収支の広域評価や、数理モデルの逆解析や最適化によって直接の計測が困難なプロセスの推定法を紹介したい。
キーワード:陸域生態系、物質循環、温室効果気体、生態系モデル、数値計算
世話人:岩田雅仁(物循)
会場:数理・自然情報合同研究室(理学部A棟4F西端)


2015年1月19日
16:20 - 17:50
ホヤp53遺伝子の発生における役割と進化
講演者:野田 武志氏 (沖縄科学技術大学院大学 ゲノム・遺伝子制御システム科学ユニット 研究員)
 動物の体は1個の卵から始まり,発生をへて成体のかたちになる。近年の分子生物学的手法の発達により,生物の発生の進化が実験科学として研究できるようになってきた。 海産無脊椎動物のホヤは,脊椎動物にもっとも近縁な無脊椎動物である。ホヤの幼生は細胞の数が2000個ほどしか無くシンプルではあるが,脊索動物としての基本的な特徴を持つことから脊椎動物や脊索動物の発生の進化を明らかにするためのモデルとして研究が行われている。
 本講演で,ホヤ幼生の発生における転写調節因子p53遺伝子の役割について報告する。ホヤのp53遺伝子は卵で発現するが発生過程で急速に分解される遺伝子として発見され,機能解析の結果からホヤp53遺伝子がホヤ幼生の脊索の形成に必要であることが明らかになった。最後にホヤと脊椎動物や無脊椎動物でのp53遺伝子の働きを比較することにより,p53遺伝子の発生における役割の進化について議論を行う。
キーワード:ホヤ,脊索動物,進化発生学,p53
世話人:浅見崇比呂(生物)
会場:数理・自然情報合同研究室(理学部A棟4F西端)


2014年12月17日
15:00 - 16:30
光化学反応の磁場効果とその数値解析
講演者:矢後 友暁氏 (埼玉大学大学院理工学研究科 助教)
 化学反応に対する磁場効果は、反応中間体としてラジカルやラジカルイオンのような常磁性種が生成する場合に観測される。このような磁場効果は、磁場という用語から一般的に思い起こされる磁気力やローレンツ力によって引き起こされるわけではない。化学反応の磁場効果は、常磁性種上の不対電子スピンの量子力学的な効果により発現する。溶液中での光化学反応に対する磁場効果は分子の拡散運動と密接に関わっており、磁場効果の大きさは分子の拡散の様相に依存し大きく変化する。我々の研究室では、このような磁場効果の特徴を生かし、磁場効果の磁場依存性や時間変化から微小領域での分子の拡散運動をプローブするという研究を行っている。実際には、ナノ秒過渡吸収測定により光化学反応に対する磁場効果を観測し、得られた結果を統計リュービル方程式により数値解析している。講演では、イオン液体やメゾポーラスシリカ中で観測された磁場効果について発表を行う予定である。
キーワード:光化学反応,スピン化学,磁場効果,統計リュービル方程式
世話人:浜崎亜富(化学)
会場:数理・自然情報合同研究室(A-401)


2014年11月28日
16:20 - 17:50
スマートフォンセキュリティの現状について
講演者:古川 和快氏 (株式会社富士通研究所 シニアリサーチャー)
 アプリを自由にインストールでき,個人情報を多く搭載しているスマートフォンは,マルウェアなどを作成する悪意あるハッカー達のメインターゲットとなりつつある。また,ユーザがOSに変更を加えられるなど自由度が非常に高く,ユーザがハッキングすることにより企業が意図しない利用方法が可能となっている。 講演ではAndroid端末を中心として「個人利用」「企業利用」の観点から,スマートフォンに潜むセキュリティリスクやその対策技術を紹介していく。
キーワード:スマートフォンセキュリティ
世話人:沼田泰英氏(数理)
会場:数理・自然情報合同研究室(A-401)


2014年10月28日
15:30 - 17:00
ホログラフィー原理と量子エンタングルメント
講演者:高柳 匡氏 (京都大学基礎物理学研究所 教授)
 物質の最小単位を追求する分野は、物理学の中で素粒子物理と呼ばれています。 電磁気力(静電気や磁石力など)、強い相互作用(原子核を構成する力、核力)、弱い相互作用(ベーター崩壊を起こす力)という3つの力を統一的に説明するミクロな理論は標準模型と呼ばれていて、現在では確立しています。 一方、万有引力(重力)も含めたミクロな理論の構築は容易ではありませんが、超弦理論と呼ばれる理論が最も有力であると考えられています。 このように重力の力は他の力に比べて性質が大きく異なり難しいと長い間思われてきましたが、最近の超弦理論の進展のおかげで、実は重力は、そのほかの力と同等であることが分かってきました。 その場合に非自明なのは時空の次元が重力理論を考えると1次元増えてしまうという不思議な事実です。 この原理を「ホログラフィー原理」と呼びます。その特別な場合はAdS/CFT対応と呼ばれており、超弦理論の最も重要なテーマの一つとなっております。 さらに最近では、「量子エンタングルメント」と呼ばれる量子力学の基本的な性質がホログラフィー原理において本質的であり、重力理論の時空は量子ビットの集合体ともみなせることが分かってきました。
  本講演では、このような最近の進展を概説します。
キーワード:超弦理論、素粒子理論、量子情報理論、一般相対論、AdS/CFT対応
世話人:小竹 悟氏(物理)
会場:数理・自然情報合同研究室(A-401)


2014年7月14日
16:20 - 17:50
データを暗号化したまま計算できる暗号技術について
講演者:縫田 光司氏 (産業技術総合研究所 主任研究員)
暗号化技術は,許可された人以外にデータを読まれないよう特殊な数学的処理を施す技術であり,幅広く実用化されている。一方で,データを暗号化した後で,許可された人以外でも(データを秘密にしたまま)データの中身を変更できるようにしたい状況が存在する。簡単な例としては,多数決を行う際,互いの投票内容を秘密にするため,暗号文を回覧して投票者が賛成であればデータの中身に1を加える,といった使い方が考えられる。このように「データを秘密にする」「データの中身を変更可能にする」という一見相反するかのような機能を「両方」実現する暗号化技術である「凖同型暗号」は,およそ30年前に初めて提案され,現在に至るまで研究が盛んに進められている。この発表では,暗号化技術一般に関する基礎的事項の説明から始め,凖同型暗号を成立させる数学的な仕組みや代表的な構成法,凖同型暗号を用いた応用事例や,話者の最近の研究などについて紹介する。
キーワード:暗号技術,凖同型暗号,秘密計算,群論
世話人:沼田泰英氏(数理・自然情報科学科)
会場:数理・自然情報合同研究室(A-401)


2014年5月30日
4:30PM - 5:30PM
Chern-Simons-Dirac方程式の初期値問題の適切性
講演者:岡本 葵氏 (信州大学工学部)
分数量子Hall効果や高温超電導現象などを説明するChern-Simons理論に表れるChern-Simons-Dirac方程式を考える。本講演では、Huhにより導入された空間1次元モデル方程式の初期値問題について、初期値をSobolev空間からとり、どのような Sobolev指数において初期値問題が適切となるかについて述べる。
会場:数理・自然情報合同研究室(A-401)