2017年1月25日(火) [数理科学談話会 第11回]
16:30 - 17:30
Semimetals and differential topology
講演者:Guo Chuan Thiang氏 (The University of Adelaide)
In 2015, physicists discovered the Weyl fermion in a topological semimetal, extending a remarkable list of condensed matter phenomena which realise abstract topological invariants. The theory of semimetals turns out to involve deep results in differential topology, with links to Euler structures, torsion, and Seiberg-Witten invariants. A "torsion semimetal" based on the Kervaire semi-characteristic will be introduced. The talk will be aimed at theoretical physicists and mathematicians interested in applications of topology.
世話人:五味清紀 (理学系)
会場:数理・自然情報合同研究室(理学部A棟4F西端)


2017年1月24日(火) [数理科学談話会 第10回]
16:20 - 17:30
表面増強赤外分光で観る電極表面反応:計算科学とのコラボレーション
講演者:大澤 雅俊氏 (北海道大学 名誉教授)
熱力学・速度論に立脚した伝統的電気化学と表面科学の境界領域が新たな研究分野として浮上してから20年以上になる。このきっかけを作ったのは、各種の電極界面その場の測定法の開拓である。その中で、表面増強赤外分光は、静的条件下の吸着状態の解析から動的条件下での反応解析へというパラダイムシフトをもたらしてきた。しかし、実験的に検出できる反応中間体は限られており、反応過程をより深く理解するためには、計算科学の支援が必要不可欠になりつつある。一方、計算科学においても、計算機上で「電位」を如何に印加するか、大量の溶媒分子をどう扱うかといった大きな問題がまだ十分に解決されていない。いくつかの例を上げて、現状と将来展望を紹介したい。
世話人:内田 太郎 (理学系)
キーワード:電気化学、表面科学、計算科学、赤外分光、その場反応解析、電極触媒
講師の研究分野(研究テーマ):振動分光法を用いた電極表面反応、電極触媒反応の解析
会場:数理・自然情報合同研究室(理学部A棟4F西端)


2017年1月11日(水) [数理科学談話会 第9回]
16:30 - 18:00
植物集団における新たな競争像
講演者:中河 嘉明氏 (国立環境研究所 地球環境研究センター)
生物間の相互作用、とくに競争は、生態現象の理解や予測をする上で重要なプロセスである。しかし、競争を直接観察することはできず、生物の空間分布や個体サイズの変化などから間接的に理解するしかない。また、集団内の競争は、少数の個体間の競争では現れなかった創発現象を生む。こういった理由により、競争は生態学の理論の中心部分でありながら、いまだにその理解は十分にされているとは言い難い。我々は植物集団内の競争の性質を数値シミュレーション、ネットワーク解析、競争の場などから調べている。本セミナーでは、これらの研究から新たに分かってきた競争の性質を紹介する。主要な結果として、競争は生物の成長や生存に対して負の効果を持つと従来考えられてきたが、集団内では正の効果を持つことを紹介する。また、これらの競争の知見を踏まえ、現在開発中の空間モーメントを考慮した植生動態モデルについても論じる。
世話人:岩田 拓記 (理学系)
会場:理学部8番講義室


2016年12月13日(火) [数理科学談話会 第8回]
13:00 - 14:10
超伝導の”染み出し”現象とその理解
講演者:松尾貞茂氏 (東京大学工学部物理工学科 助教)
1911年にオンネスにより金属の電気抵抗が低温でゼロになる現象が発見された。この現象は金属が超伝導と呼ばれ、電子が対となり凝縮している状態であることがバーディーン、クーパー、シュリーファーらによって理論的に明らかにされた。この超伝導現象は発見と基礎理論の確立から長い時間を経た現在でも物性物理学における研究の中心であり続けている。物質には超伝導を示すもの(超伝導体)と示さないもの(常伝導体)があるが、近年この二つをつなぎ合わせた接合に関する研究が活発になってきている。この接合では常伝導体に超伝導性が染み出す、いわゆる超伝導近接効果が起きるため、本来共存しないような“超伝導”と“強磁性”などの物質相を共存させることが可能となる。このような接合での超伝導近接効果は伝導度の測定から明らかにでき、その伝導度はBTKモデルと呼ばれる数理モデルによってよく理解できることが知られている。このような系ではエキゾチックな物性の発現が予言され、実際に観測され出している。
本講演では超伝導現象の概論と超伝導近接効果、とくにBTKモデルの解説を行ったのち、現在注目されているスピン三重項超伝導近接効果と呼ばれる現象に関して、最近我々が行った研究を中心に紹介する予定である。
キーワード:超伝導、アンドレーエフ反射、BTK モデル
世話人:中田 陽介 (理学系)
会場:数理・自然情報合同研究室(理学部A棟4F西端)


2016年12月9日(金) [数理科学談話会 第7回]
10:45 - 11:45
パーシステント図の逆問題
講演者:大林一平氏 (東北大学 原子分子材料科学高等研究機構)
パーシステントホモロジーはホモロジーの概念とフィルトレーションによる距離概念を組み合わせることでデータの幾何的情報を効率的に縮約する仕組みであり、位相的データ解析の中心的なツールである。パーシステント図はその可視化手法であり、パーシステントホモロジーを利用したデータ解析でよく用いられる。パーシステント図は2次元平面上のfinite multisetで、その各点がデータの幾何的特徴を捉えている。パーシステント図でデータを解析するときには、得られた図が捉えた幾何的特徴は何なのか、という問題を考える必要がしばしばあり、この問題はある種の逆問題と考えられる。本講演ではこの逆問題についていくつかの手法について講演する。ある手法はパーシステント図の裏側によりリッチな情報を隠しておき後からそれをとりだす手法で、逆問題と呼んでよいのか?という方法であるが、その簡便性から有効である。別の手法はある種の正則化項付きの逆問題を解くもので、より多くの情報を得られる。これらの手法について数学的な基礎とそのアルゴリズム、計算例について紹介する。
世話人:沼田 泰英 (理学系)
会場:数理・自然情報合同研究室(理学部A棟4F西端)


2016年12月2日(金)
15:00 - 16:30
時間変化する社会ネットワークの分析
講演者:高口 太朗氏 (情報通信研究機構)
個人を頂点とし個人間の社会的関係を枝とするグラフ(ネットワーク)は社会ネットワークと呼ばれ、その構造を分析することにより社会集団についての有用な情報が得られる。一方、個人間のコミュニケーション行動により社会ネットワークを定義すると、一般的にその構造は時間的に変化する。その時間的変化のパターンは情報の伝達経路などに影響を与えると考えられる。本講演では、時間変化する社会ネットワークの複数の事例に共通してみられる性質について、講演者らによる研究事例を交えながら概説する。加えて、そのような社会ネットワークデータからコミュニケーションにおける応答行動を推定する講演者らの最新の研究事例について紹介する。
世話人:沼田 泰英
会場:数理・自然情報合同研究室(理学部A棟4F西端)


2016年11月22日(火)
16:30 - 18:00
かたちの平均
講演者:鍛冶 静雄氏 (山口大学)
3次元空間内に複数の形状が与えられた時、 その”平均”とは何であろうか。この講演では、コンピューターで計算・出力するという観点から、 この問に一つの答えを与える。扱う数学の道具自体は高度ではないが、リー群論や離散幾何の アイデアが応用されることで、ペンギンたちが平均される様子をお見せしたい。
世話人:沼田 泰英
会場:数理・自然情報合同研究室(理学部A棟4F西端)


2016年11月22日(火)
14:45 - 16:15
古典直交多項式の零点とSzegő核の有理性
講演者:澤 正憲氏 (神戸大学)
Hermite多項式の一般化であるQuasi-Hermite polynomialの零点の有理性判定は,Waring問題のHilbertによる解(D. Hilbert, Math. Ann., 1909)に端を発する「ある」不定方程式系の解の存在性や,代数的組合せ論におけるGaussian design(Bannai-Bannai, J. Alg. Combin., 2004)の存在性と等価な関係にある. 本講演では,これらの等価性について詳しく述べたのち,主問題の解を与える.また,ガウス積分に関するSzegő核の有理点の解析などとも絡めながら,代数幾何的な観点から,主問題のp進数体上での拡張性について考える.他の準直交多項式について,一連の結果の類似やギャップについても考える.
 なお,本講演は内田幸寛氏(首都大)との共同研究に基づいている.
会場:数理・自然情報合同研究室(理学部A棟4F西端)


2016年11月18日(金)
16:30 - 18:00
単体的複体のh-triangle, 分割可能性とhereditary property
講演者:八森 正泰氏 (筑波大学)
(本講演では、単体的複体として、頂点数が有限なもののみを扱う。)
純な単体的複体、すなわち、極大な単体の次元がすべて等しい単体的複体の組合せ的性質を調べる上で、h-vectorと呼ばれるものは重要な役割を果たすことがよく知られている。特に、単体的複体が分割可能と呼ばれる性質を満たすとき、h-vectorの各要素は非負になることがよく知られている。単体的複体が純でない場合には、h-vectorに代わるものとしてh-triangleというものがあるが、分割可能性との関係は簡単には行かない。このあたりの事情を紹介しつつ、分割可能な単体的複体のh-triangleの満たす性質と、それを用いた単体的複体のhereditary propertyの議論への展望について紹介したい。
会場:数理・自然情報合同研究室(理学部A棟4F西端)


2016年10月26日(水) [数理科学談話会 第三回]
17:10 - 18:40
パーシステントホモロジーを用いたアモルファス構造の記述
講演者:中村 壮伸氏 (東北大学 原子分子材料科学高等研究機)
アモルファス固体は、結晶固体のような周期性に基づく完全な分類が存在しない。そのため微視的構造を記述する数学的手法は個別各論的に提案されている。多くのアモルファス固体には中距離秩序構造(MRO)と呼ばれる多体構造が存在する事が多くの実験、シミュレーションにより示唆されている。ざまざまなアモルファス固体に対してMROを統一的に記述するには個別各論を超えた汎用性の高い記述方法があることが望ましい。我々は分子動力学計算で得られた2つの代表的なアモルファス構造(シリカガラス、金属ガラス)に対しパーシステントホモロジーによる解析を行った。 その結果、パーシステントホモロジーはアモルファス構造の違いによらずMROを検出し幾何学的構造を同定する汎用的手法である事がわかった[1][2]。
[1] Nanotechnology 26, 304001,(2015)
[2] PNAS 113, 7035, (2016)
世話人:沼田 泰英
会場:数理・自然情報合同研究室(理学部A棟4F西端)


2016年10月18日(火) [数理科学談話会 第二回]
17:10 - 18:40
Reed-Solomon符号の誤り訂正アルゴリズム入門
講演者:中島 規博氏 (東京電機大学)
概要: 誤り訂正符号理論では,ディジタル通信などにおいて生じる誤りを自動的に修正 し,元の情報を復元することを目的とする.代数的な誤り訂正符号であるReed- Solomon符号・Golay符号・Reed-Muller符号などは高い信頼性をもつことが特徴 であり,古くは宇宙船通信の分野で使用するために誤り訂正アルゴリズムの研究 が進んだ.特に1972年のマリナー計画では符号長32の1次Reed-Muller符号を使っ て火星写真の電送に成功した. 本講演では,Reed-Solomon符号のユークリッドの互除法による誤り訂正アルゴリ ズムを述べる.本講演で述べる誤り訂正アルゴリズムは現代では二次元バーコー ドに読み取りに応用されている.
世話人:沼田 泰英
会場:数理・自然情報合同研究室(理学部A棟4F西端)


2016年9月23日(金) [数理科学談話会 第一回]
16:30 - 17:30
様々なクラスタリング手法を用いたプロ野球投手の分類について
講演者:小泉 和之氏 (横浜市立大学)
概要: 本講演では日本プロ野球における投手を評価する新たな指標の提案が最終的な目標ではあるが、その前提としてそもそも先発型投手と救援型投手では特徴が異なるのではないかという点に注目し、ある程度の回数を投げている先発・救援のデータからクラスタリングを行い、投手タイプの分類を行う。これにより、投手の育成にも得手不得手を客観的に判断することができるようになるなど現場での利点も大きいと考えられる。クラスタリング手法の詳細, 分析結果の詳細については当日報告する。
世話人:沼田 泰英
会場:数理・自然情報合同研究室(理学部A棟4F西端)


2016年9月23日(金) [数理科学談話会 第一回]
15:00 - 16:00
ブロードキャスト暗号における鍵管理木と完全マッチングに関する考察
講演者:落海 望 氏 (湘南工科大学)
送信者の選択した相手のみに対してメッセージを効率的かつ安全に送信するための暗号としてブロードキャスト暗号が知られている。その際、鍵の管理法として木構造を用いる.その際の木構造に関する考察と、さらにその鍵管理木とグラフ理論に出てくる完全マッチングの間には様々な全単射が存在するがそのことについても紹介する。
世話人:沼田 泰英
会場:数理・自然情報合同研究室(理学部A棟4F西端)