無料で使える多くの有用な数学用のソフトウェアがあるが、 MS Windows で使えるものは限られており、 その多くは unix 系の OS での利用のほうが便利である。 そこで unix 系の OS で個人の PC への導入が最も簡単な Linux を利用することを考える。 Linux には多くのディストリビューションがあるが、ここではユーザー数も多くなり情報が豊富に得られる UBUNTU を利用する。
UBUNTU を個人の PC (Windows マシン) で利用するには次のような選択肢がある。
UBUNTU のインストール DVD を作成するために、書き込むファイルをダウンロードする。 すでにディスクがある場合には不要である。 UBUNTU は年に 2 回、4 月と 10 月にバージョンアップされる。 バージョンには通常版の他に長期サポート版 (LST) があり、通常版のサポート期間が 9 ヶ月なのに対して、 長期版のサポート期間は 5 年間である。 普通は最新版を利用すればいいが、安定して同じ環境を使い続けたいならば LTS を選択してもよい。 2014 年 10 月現在の最新版の LTS は 14.04 である。 イメージファイルは UBUNTU Japanese Team のホームページからダウンロードできる「日本語 Remix」をお薦めする。 64bit 版と 32bit 版があるが、ホームページの記述によるとメモリが 2GB 以下の場合には 32bit 版がよいとのことである。
ダウンロードしたイメージファイルを DVD に書き込む。
ポータブル HDD を接続し、作成した DVD でブートすれば UBUNTU が起動する。 「UBUNTU を試す」、「UBUNTU をインストールする」の選択が出るので、「インストールする」を選ぶ。 試して見たければご自由に。
指示に従って作業すればインストールは難しくないが、注意することがいくつかある。 操作を誤ると MS Windows が起動できなくなったり、すべてのデータが消失したりするので、慎重に。
再起動するようにメッセージが出るので、DVD を抜いて再起動する。 USB からブートすればインストールした UBUNTU が起動する。 もし HDD から起動できないときはここなどを参考にしていろいろと試してみよう。
最近の PC や HDD では USB HDD からのブートに問題がある場合が多いようである。 その場合には VirtualBox などを利用して、仮想マシンで UBUNTU を動かすことを考えるとよいであろう。 (2017/05/03 追記)
UBUNTU でディフォルトで採用されているウインドウマネージャは unity というものだが、 これがとても重い。 私はいつも xfce という軽量版に入れ替えて使っている。 最も簡単な方法は terminal から
sudo apt-get install xubuntu-desktopとする方法である。 パスワードを聞かれ、更にインストールするか聞かれるので、それに答えて、インストールしよう。 それなりに時間がかかる。
インストールが済んだら、一度ログアウトする。次に「xubuntu セッション」を選択してからログインすれば、 xfce をウインドウマネージャとして起動する。もとの方が良いならば「ubuntu セッション」を選択すれば良い。 (他の選択肢もあるが、私のお気に入りは xubuntu である。)
ホームディレクトリにははじめから「ドキュメント」などのいくつかのディレクトリが作成されているが、 これが日本語表記なのは利用上不便である。そこでこれを英語表記に換えるために terminal から
LANG=C xdg-user-dirs-gtk-updateとし、ログインしなおせばよい。
UBUNTU にソフトウェアを追加するには xubuntu のときに行ったように apt-get install を行えばよいが、 名前が分からないと使えない。簡単な方法は「ubuntu ソフトウェアセンター」を利用することである。 簡単な説明がついており、メニュー形式でインストールしたいものを選ぶことができる。 Web ブラウザ FireFox, メーラー Thunderbird, C コンパイラ gcc, MS Office 互換のオフィススイート LibreOffice などはディフォルトでインストールされている。
以下で、いくつかの有用なものを紹介する。
「ubuntu ソフトウェアセンター」よりも細かい指定が可能なパッケージマネージャである。
sudo apt-get install synaptic
LaTeX や C 言語のソースを記述するにはエディタを利用する。 はじめからいくつかのエディタはインストールされており、好みのものを利用するとよい。 私はいつも emacs を利用しているが、慣れないと使いにくいかも知れない。 ちなみにこの文書は gedit で書いている。
sudo apt-get install emacs
数学をする人にとって LaTeX は必需品である。 MS Windows に LaTeX をインストールするのはやや面倒なこともあるが、ubuntu へのインストールは簡単である。
sudo apt-get install xdvik-ja texlive-lang-cjkLaTeX 用の総合環境やエディタもいくつもあるので、試してみるといいだろう。
優秀な計算用のソフトウェアである。 日本語の解説も多いので、色々と試してみるといいだろう。
sudo apt-get install maxima
優秀な代数計算用のソフトウェアである。拡張機能を使うには別にパッケージをインストールする必要がある場合もある。
sudo apt-get install gap-core
優秀な計算用のソフトウェアである。簡単にインストールするにはリポジトリを追加する必要がある。
sudo apt-add-repository -y ppa:aims/sagemath sudo apt-get update sudo apt-get install sagemath-upstream-binaryUBUNTU 17.04 では上記の方法ではなく、単に
sudo apt-get install sagemathで sage をインストールすることが出来る。同時に多くのパッケージがインストールされる。 例えば、上記の gap, maxima や R, google chrome などがインストールされる。 インストールには時間もかかりディスクも数 GB は使う。(2017/05/03 追記)
プログラムを常に最新の状態にするために、以下のコマンドを実行する。
sudo apt-get update sudo apt-get upgradeアップデートがあるとメッセージが表示されるので、それに従ってもよい。 kernel の更新は
sudo apt-get dist-upgrade再起動が必要になる。ディストリビューションのアップグレードは
sudo do-release-upgrade -d
インストールは成功したように思えるのに HDD から起動できないときは、 いくつかの原因が考えられるので、色々と試してみよう。 以下によくある原因とその対処法について簡単に説明する。
PC の起動時に F12 (PC によっては違うファンクションキーかも知れない) を押して、ブートメニューを表示させ、USB ハードディスクを選択する。 BIOS の設定で USB デバイスの順位を上にしていても、USB の認識が遅れると内蔵 HDD が優先される時があるらしい。USB ハードディスクが選択肢にないときは BIOS で起動可能に設定されているかどうかを確認しよう。「USB レガシーサポート」も有効にする。
通常の ubuntu は PAE 非対応の機種では使えない。xubuntu など対応できるものを利用しよう。 (xubuntu は以前は大丈夫でしたが、最近は試していませんので、もしかしたらダメかも知れません。上の説明にあるように ubuntu に xubuntu-desktop を入れるのではなく、はじめから xubuntu を入れるということです。)
これによって PC の問題か HDD の問題かを認識できるかも知れない。 PC と HDD の相性ということもあるかも知れない。
ここで説明したことは ubuntu を利用するための最小限のことで、ubuntu でできることのほんの一部である。 興味がある人は自分で調べて、もっと便利に ubuntu を利用して欲しい。
Akihide Hanaki (Shinshu University), 2017/05/03