量子系上の状態 アブストラクト

統計力学モデルの臨界現象を数学的に厳密に解析する数少ない手段の一つに,レース展開の手法がある.この方法は最初,1985 年にBrydgesとSpencerによって考案され,弱い自己回避歩行(weakly self-avoiding walk)の 5次元以上での平均場的振る舞いが厳密に証明された.その後,強い自己回避歩行(strictly self-avoiding walk),パーコレーション,格子木や格子動物(lattice trees,lattice animals),コンタクトプロセス,イジング模型に適用され,それぞれ高次元における平均場臨界現象の厳密な証明に成功した.
 本講演では,レース展開とは何か,これまでの解析方法がどのようなものであったかを概観し,これからの課題について議論する.