ランダム・シュレディンガー作用素入門-周期と非周期の数理物理- アブストラクト

金属結晶内の自由電子の運動を数学的に解析するとき、結晶の規則的な構造を表す周期的ポテンシャルを持つシュレディンガー方程式を解くことになり、その数学的諸性質(ブロッホ理論)も古くから良く知られて来ました。固体物理では、金属結晶に不純物を添加して電気伝導性の異なる新たな物質を産み出す試みが盛んに行われており、その成果の一つが皆さんが日常的に使う半導体です。この「不純物」の数学的モデルの一つとしてランダム・パラメータを係数に含むポテンシャルを持つシュレディンガー方程式が考えられており、その数学的性質を解析することにより物質の電気伝導性(導体・半導体・絶縁体)についての定性的理解が得られます。この講演では、ランダム・シュレディンガー作用素に関する基礎的な概念を数値シミュレーションを交えて説明し、この分野における中心的な話題である「リフシッツ・テイル」「アンダーソン局在」などについて、現在までに得られている数学的結果を紹介していきます。