2018年度の講演

2019年2月20日
17:10 - 18:10
1次元split-step量子ウォークのウィッテン指数
講演者:田中洋平 (フリンダース大学)
最近, 信州大学の A. Suzuki によって, 場の量子論の文脈で論じられる事の多い”超対称性”の構造が量子ウォークの理論にも現れる事が示された. Suzuki の理論では超対称性を持つ量子ウォークに対して, 元々は超対称性の自発的破れの有無を確かめる方法の一つとして導入されたウィッテン指数と呼ばれる指数を対応させることを可能にしている.
2018年7月に行われたRIMS共同研究「量子ウォークと場の量子論における超対称性の数理」の講演では, 中間報告として超対称性を持つ量子ウォークのプロトタイプ・モデルである 1 次元 2 状態 split-step量子ウォークを紹介したが, 残念ながらそのウィッテン指数の詳細な計算方法までは話が及ばなかった. 本講演では,実は1 次元split-step量子ウォークのウィッテン指数は初等的な差分方程式の知識だけで簡単に計算する事が可能である点を指摘し, その指数の具体的な公式を紹介する.
* 本研究は鈴木章斗氏との共同研究である.
会場:工学部W2棟503室


2019年2月20日
16:00 - 17:00
量子ウォークにおけるスペクトル写像定理のある拡張
講演者:浅原啓輔 (北海道大学)
量子ウォーク(以下QW)はランダムウォークの量子版と捉えることができ,Groverの量子探索アルゴリズムなど応用上も 重要なモデルである.特にその時間発展が $U=SC$ ($S,C$はユニタリかつ自己共役)で記述される場合には 樋口,瀬川,鈴木(2016)(以下HSS)によって与えられたスペクトル写像定理により,Uのスペクトル解析ができる. この場合,特にUはユニタリであることに注意したい. 一方で実験系の要請により望月,Kim,小布施(2016) によって非ユニタリな時間発展で記述されるQWが提唱された. このモデルの時間発展作用素のスペクトル解析にはHSSは応用できないため,HSSの拡張として応用可能なものを考えることは自然である. 本セミナーでは $U=SC$ ( $S$ はユニタリかつ自己共役, $C$ はある自己共役作用素)という作用素に対するSMTについて, 点スペクトルに関する結果を紹介する.
会場:工学部W2棟503室


2019年2月18日
13:30 - 14:30
Hypergroups derived from random walks
講演者:澤田友佑 (名古屋大学)
超群とは群を確率論的に一般化した概念で, それは積に関して(群のような)ある性質を持った*-環である. Wildbergerはあるグラフ上のランダムウォークから超群を得る方法を与えた. 任意のグラフから超群が出来るわけではなく, 環としての結合律が問題となる. 本講演では, その超群の構成法, 超群が得られる(有限とは限らない)グラフの十分条件, 超群となるグラフの例をいくつか紹介する.
会場:工学部W2棟503室


2018年6月29日
10:00 - 11:30
Topological Levinson's theorem counts infinitely many bound states
講演者:井上秀樹 (名古屋大学)
Levinsonの定理は, 量子系の散乱に由来するある量がその系の束縛状態の数に等しいという主張です. 1949年にLevinsonがある具体的なモデルに対して証明して以降, Levinsonの定理は様々なモデルに対して調べられてきました. 一般的な証明の多くが複素解析などに基づく一方で, Kellendonk, Richardは全く異なるアプローチを提案しました. 彼らはC*環のK理論によるトポロジーの枠組みを導入することで, Levinsonの定理の正体がAtiyah-Singerの指数定理であることを明らかにしました. これにより, 束縛状態が有限個の場合, Levinsonの定理の証明はToeplitz環というC*環を具体的に構成する問題に帰着されます. それでは束縛状態が無限個ある場合はどうでしょうか. 本講演では, -2次のポテンシャルをもつ半直線上のSchrödinger 作用素をモデルとして, 束縛状態が無限個の場合のLevinsonの定理を考察します. このモデルに対して, (概)周期的擬微分作用素から生成されるC*環を考えることで, 無限個の場合でも意味のある等式が得られることを紹介します. 本講演は, S. Richard氏(名大)との共同研究に基づきます.
会場:理学部A棟4階数理・自然情報合同研究室