第2回 信州関数解析シンポジウム

アブストラクト

佐々木 浩宣 (千葉大)
空間1次元非線型Dirac方程式に於ける解の漸近挙動について

 冪乗型非線型項を持つ空間1次元のDirac方程式を考える。 具体的には、十分小さな初期値に対する時間大域解の存在と、時刻無限大に於ける解の漸近挙動について考察する。 冪乗の指数pが5以上である場合は、Strichartz型時空評価及びSobolevの埋蔵定理を用いることで、解の漸近自由性が容易に導かれる。 一方、指数pが3より大きく5より小さい場合は、漸近自由性が予想されるものの、上記時空評価のみで示すことは出来ないように思われる。 そこで、Galilei変換の生成作用素を修正したものと、非線型波動方程式の解析で有用とされる或る作用素を併用することで、上記予想が真であることを紹介する。

和田 和幸 (北大)
複素クライン-ゴルドン場が自己相互作用する系のハミルトニアンの性質について

 スピンが0の粒子と反粒子が、場の2乗と4乗の和による摂動で、自己相互作用をしている系を考える。 この系のハミルトニアンは、空間切断と呼ばれるものを導入する事により、ボソンフォック空間上の作用素として実現される。 本講演ではこの作用素の性質、特に自己共役性と基底状態の存在に主眼を置いて、得られた結果を紹介したい。

釣井 達也 (大阪府立大)
Deformations of Hypergroups

 量子群のカテゴリーでは「有限群の$q$-deformationは存在しない」といわれているが、ハイパー群のカテゴリーでは「有限群の$q$-deformationが可能」である。 本講演では、さらに、さまざまなハイパー群の$q$-deformationに関して得られた結果を報告します。

加藤 幹雄 (信大)
Invitation to Banach space geometry

「回帰性」(位相的性質)や「不動点性」(距離的性質)といったバナッハ空間の重要な性質が単位球のuniform non-squareness(一様凸性より弱い)から導かれる。 このように単位球の幾何学的な形状がバナッハ空間の性質に大きく反映する。 本講演では、「バナッハ空間の幾何学」におけるいくつかの基本的な概念を紹介し、von Neumann-Jordan定数などの幾何学的定数やバナッハ空間の直和に関する最近の結果について述べる。

谷保 智哉 (信大・M2)・河邊 淳
汎関数とその表現測度における擬加法的性質の遺伝性について

単調かつ共単調加法的な非線形汎関数Iに対して,その表現測度μが非加法的測度論を展開する上で重要ないくつかの擬加法的条件をもつために,汎関数Iに課すべき条件を定式化した.

船川 大樹 (北大)
特異摂動の入ったDerezinski-Gerardモデルの基底状態の存在性について

様々ある量子場の相互作用モデルをある程度一般化したモデルとしてDerezinski-Gerardモデルがある。 このモデルは数学としてはあるヒルベルト空間上の下に有界な自己共役作用素として実現される。 ボソンの場の4次の摂動を念頭に置き、Derezinski-Gerardモデルに特異な摂動を入れたモデルを新しく考える。 本講演ではこのモデルの自己共役性と基底状態の存在性について話す。

日高 建 (九州大)
準相対論的なPauli-Fierz模型のスペクトルについて

 準相対論的Pauli-Fierz模型は準相対論的なシュレーディンガー作用素と量子輻射場が最小結合した模型である。 ヒルベルト空間上の自己共役作用素である全ハミルトニアンのスペクトル、特に、基底状態の存在について講演する。 ここで、基底状態とはハミルトニアンのスペクトルの下限に対応する固有ベクトルのことである。 準相対論的なシュレーディンガー作用素に従う粒子の質量Mは0の場合も含めて考察する。 また、本講演では、ボソンに正の質量を仮定する。

森岡 悠 (筑波大)
Scattering theory for discrete Laplace operators on graphs with Z^d-ends

 遠方では正方格子の構造を持つエンドを複数接続したグラフ上での離散ラプラシアンに対し, スペクトル・散乱理論を構成する. このようなグラフは, 漸近的にユークリッド的な計量を持つ多様体の離散アナロジーであると考えられる. 本講演では, 連続スペクトルの構造, 極限吸収原理, スペクトル表示, 波動作用素の存在と漸近完全性などについて紹介したい.

守屋 創 (芝浦工業大)
超対称性のC*代数への導入とその表現

 超対称性とはスピンの値が異なる場, フェルミオン場とボゾン場を入れ替える対称性である. 超対称性を持つ理論は高エネルギー物理で盛んに研究されており,他にも隠れた超対称性を持つ非相対論的モデルなどもいくつか提案され, 超対称性に由来する特徴的な性質が得られている.
 ここでは``関数解析的に厳密"に超対称性を扱う.無限自由度量子系の数学的な理論がいくつか知られるが, C*代数を基にしたアプローチを取り上げる. 出発点はgraded C*代数上のsuper微分で, これからDifferential Graded Algebra(DGA)が構成されると期待される. しかし超対称性微分の定義域については, いくつかの絡み合った非自明な問題がある. ---素朴に書くと有限次元の話になってしまう etc---- 具体例を通して, 二つの異なる超対称C*力学系のスキームを提案する. 最後にGNS表現を通して選ばれた状態のcyclic Hilbert空間でいかに超対称性代数が実現するかを示し, boson-fermion Fock空間のアプローチとの比較を行う.
keywords: 超対称性, C*力学系, GNS表現

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