卒業研究などについての落書き.

数理・自然情報科学科/数学科では, 4年時に卒業研究という形で, 各教員の直接指導を受けることもできます (入学年度によっては必修やもしれません). (選択科目であったとしても) おそらく, ほとんどの人が卒業研究を履修することと思いますが, その際には, どの教員を指導教員として希望するかを考えなければなりません. 学年によっては, 私の講義を受けたことがないという事も起こりえますので, 選択の際の参考になればよいと思い, 私の研究室ではどのように卒業研究を進めているかなどについて 文章を起こします. とりとめもなく思いつたところから順に書きますので, 読めない部分もあるかと思いますがご了承下さい. これを読んで興味を持った人, もしくは, 不明な点がある人は 直接居室を訪ねて来ていただければお答えできることもあると思います.

セミナーは, 3年生までの講義と演習が主体の学習とは大きく性格が異なります. 準備などが大変に見えるかもしれませんが, それに見合う価値のあるものだと, 少なくとも私は思います. もし卒業研究を履修するかどうかで迷っているのであれば, ぜひ卒業研究を履修することを薦めます.

4年生のセミナについて.

4年生の卒業研究では, セミナーでは, (私が読んだことのない) テキストを熟読してきてもらい 毎週発表をしてもらう予定です. (一般的に, セミナ, ゼミ, 輪読, 輪講などと呼ばれているものだと思えばよいです.) テキストは本人の興味に合わせて, 相談して決めます. また, 複数の学生が受講する場合は, 特段の事情が無い限り, 一人ひとり異なるテキストを使います. また, 自分が発表するだけではなく, 他の受講者の発表を聞いてもらいます.

テキストは本人の興味に合わせて決めるので, 卒業研究の指導教員の希望を出す前に, 必ず事前に相談に来て下さい. 私自身は, 代数系の講座を担当しており表現論組合せ論に関わる研究を行なっていますが, それに拘る必要はあまりありません.

大学院修士課程への進学を考えている人も多いと思います. もし修士課程へ進むことを考えているのであれば, その旨教えて下さい. もし修士課程へ進学予定であれば, 4年生の1年間だけではなく, 修士課程を含めた 3年間でテキストを読みきるという選択肢もあり, テキストの選択の幅が広がります. 逆に, もし4年生を終えた後就職をする予定であれば, テキストをその1年間で読み切るようにしたいと思います.

セミナでの発表の際には, 自筆のノートを見ながら発表してもらいます. 教科書を見ながらの発表や ノートに教科書のコピーを貼り付けるなどということは 認めません.

どのような発表をするかというのは, 大学の数学の講義を想像して下さい. おそらく, 大学の講義では, `定義'という見出しをつけて定義を書き, `定理'という見出しをつけて定理のステートメントを書き, `証明'という見出しをつけて定理の証明を書く, ということの繰り返しだったと思います. そのような形式で発表をして下さい. 本によっては, その様な見出しがなく 本文中に定義が書かれていたりすることもあります. それらをうまくまとめ直して, きちんとどれが定義でどれが定理でということを はっきりさせ発表をしてもらいます. また, 例えばテキストに `明らか' とあった場合, それは著者にとっては明らかかもしれませんが, 読者に取っては明らかではないということは, しばしばあります. 自分にとって明らかではない場合は, 証明を付けなければいけません. テキストによっては, 誤りがある場合もあります. その場合はきちんと誤りを指摘し修正して下さい. 少なくとも自分の発表で板書したものについては責任を持ち, もし質問がでたらきちんと答えて下さい.

セミナの準備には十分な時間をかけて下さい. 卒業研究の単位数が通常の講義に換算すると 何コマに相当するのかを想像すると, どのくらい準備の時間が想定されているか想像できるかもしれません. 準備の際に, もしわからないことがあるのであれば, (セミナーの際にわかりませんというのではなく) 事前に質問に来て下さい. また, 質問に来て解決したとしても, おそらく自分で理解するには時間がかかります. セミナーの前日などといった直前ではなく, きちんと消化できるように時間的余裕を持って質問に来て下さい.

基本的にはセミナは終わりの時間を気にせず, 切りのよいところまで行います. 毎回の発表時間は, 90分以上を目安にし準備をしてきて下さい.

卒業研究の発表会で, 1年間勉強してきたことを発表してもらいます. 発表会は例年2月に行われます. また, ポスターという形で勉強してきたことをまとめてもらいます. 卒業論文の提出は義務ではありませんが, 書きたいということであれば歓迎します.

セミナは4月から初めますので, 春休み中に予習をしておいて下さい. 春休み中に準備をしておかないと, 4月から自転車操業的に予習をすることになり, 辛くなります. 夏休みはセミナを行わないと思いますが, テキストの進度が切りのよい所になる様にするため, 少し夏休みにずれ込むことはあると思います. 夏休み中は予習を進め後期に備えて下さい.

セミナは曜日を決めて毎週行うことになると思いますが, 都合が悪い時には適宜相談し別の曜日に行うこともあると思います. (セミナーを体調不良などで急にキャンセルをしたいということもあると思います. そういうことをメールで伝えるときには, 他の参加者もCCにいれてください. 他の参加者がセミナーのキャンセルを知っているか確認したりする手間が省けます.)

過去にセミナーで扱ったテキスト

以下に過去にセミナーで扱った(もしくは現在扱っている)テキストを列挙しておきます. もしかしたら参考になるかもしれませんが, セミナーでは私が読んだことのない本を扱うことに注意してください.

卒業研究

参考のため卒業研究のタイトルも括弧書きで併記しておきます.

2019年度
+ Ireland, Rosen: A Classical Introduction to Modern Number Theory, 1995, GTM 84, Springer. 394ページ, ISBN 0-387-97329-X.
+* James E. Humphreys: Reflection Groups and Coxeter Groups (Cambridge Studies in Advanced Mathematics) , 1992, Cambridge University Press.
+ 田澤 新成: グラフの数え上げ ---母関数を礎にして---, 2014年05月, 共立出版, ISBN978-4-320-11086-1, A5 182ページ.
+ 丸山 正樹, グレブナー基底とその応用 (共立叢書・現代数学の潮流), 共立出版 (2002/10/1), ISBN-10: 4320016939, ISBN-13: 978-4320016934, 258ページ.
2018年度
佐藤 肇: リー代数入門 -線形代数の続編として-, 裳華房, 2000年10月, ISBN 978-4-7853-1523-8, A5判/118頁. (21ページから続き, 前期まで)
J.E. Humphreys: Introduction to Lie Algebras and Representation Theory (Graduate Texts in Mathematics) Springer. (後期から) (𝔰𝔩(2,ℂ)の表現)
山崎 隆雄: 初等整数論―数論幾何への誘い― , 共立講座 数学探検 全18巻 【6】巻, 共立出版, ISBN 978-4-320-11179-0, A5/252ページ, 2015年05月. (5章p.114まで) (有限体上における方程式について)
岡田 聡一: 古典群の表現論と組合せ論〈上〉 (数理物理シリーズ), 培風館, ISBN-13: 978-4563006631, 22cm, 263ページ, 2006/4/1. (古典群の表現論と組合せ論)
2017年度
草場 公邦: 行列特論 (基礎数学選書 21), 裳華房, 1979, ISBN-10: 4785311231, ISBN-13: 978-4785311230 226ページ. (109ページまで) (正定値二次形式をもつグラフ)
永原賢, 本瀬香: 代数的整数論入門, 学術図書出版社, 1999/03, ISBN-10: 4873612152, ISBN-13: 978-4873612157, 143ページ. (9章 107ページまで) (2 次体について)
Tom Leinster (著),‎ 斎藤 恭司 (監修),‎ 土岡 俊介 (翻訳) : ベーシック圏論 普遍性からの速習コース, 丸善出版, 2017/1/29, ISBN-10: 4621300709, ISBN-13: 978-4621300701, 264ページ. (3章 100ページまで) (Haskell における圏論のモナドのあらわれ)
2016年度
Qing Liu: Algebraic Geometry and Arithmetic Curves, Oxford University Press, June 29 2006, 600 pages, ISBN-13: 978-0199202492 (2章から続き, 3章まで. pp 26-109) (スキームとエタール射)
^ *前園宜彦: 数学基礎コースQ 5 「概説 確率統計[第2版]」, サイエンス社, 2009/9, ISBN 978-4-7819-1234-9, A5/176pp. (相関分析および統計的仮説検定と, その作中品詞出現頻度分析への応用)
^ *前野俊昭: 「シューベルト多項式とその仲間たち」 (問題・予想・原理の数学), 数学書房, 2016/3/7, ISBN-13: 978-4903342436, 200ページ. (前期まで, 2章まで -p38.)
^ *Bruce E. Sagan : The Symmetric Group --- Representations, Combinatorial Algorithms, and Symmetric Functions, Graduate Texts in Mathematics Volume 203 2001, Springer, ISBN: 978-1-4419-2869-6 (Print) 978-1-4757-6804-6 (Online), 238ページ. (後期から, 1章まで -p52.) (Schurの補題)
^ 日比 孝之 (著): グレブナー基底 (すうがくの風景) , 朝倉書店, 2003/06, ISBN:978-4254115581, 193ページ (3章まで, p3-47)
2015年度
澤田 秀樹: 暗号理論と代数学 (プラタンBOOKS) , 海文堂出版, 1997/01, ISBN: 4303723304, 9784303723309, A5/145pp. (有限巡回群のランダムウォークについて)
安藤 哲哉: ホモロジー代数学, 数学書房, 2010/03, ISBN 13 : 9784903342160 ISBN 10 : 4903342166 22cm, 343pp. (1章, -p.33) (加群の完全系列について†)
佐藤文広: 石取りゲームの数学: ゲームと代数の不思議な関係, 数学書房, 2014/3, ISBN-10: 490334276X ISBN-13: 978-4903342764 A5判, 256頁. (6章まで. -p.90) (分割型制限ニムのグランディ数について)
2014年度
*宮地 充子: 代数学から学ぶ暗号理論  整数論の基礎から楕円曲線暗号の実装まで, 日本評論社, 2012.03, A5/288pp. (4-6,9-章を除く) (カーマイケル数と強擬素数の個数について)
*萩田真理子: 暗号のための代数入門 (コンピューターサイエンス・ライブラリー 5), サイエンス社, 2010.12.10 ISBN 978-4-7819-1268-4, A5/208pp. (11章まで, -p142) (ミラー-ラビンテストで合成数であっても「素数の可能性がある」と判定される確率について)
2013年度
杉原 厚吉: だまし絵と線形代数, シリーズ・現象を解明する数学 (三村 昌泰, 竹内 康博, 森田 善久編集) 共立出版, 2012.09. A5/152pp. (線画がだまし絵となる様な立体について)
*芳沢 光雄: 置換群から学ぶ組合せ構造, 日本評論社, 2004.11, A5/176pp. (3,4章を除く) (捕食グラフと競合グラフの正則性について)
*細矢 治夫: トポロジカル・インデックス  フィボナッチ数からピタゴラスの三角形までをつなぐ新しい数学, 日本評論社, 2012.08, A5/176pp. (既約ピタゴラス数とトポロジカル・インデックス)
土井 幸雄: 数学ひろば 数とパズルの18話, 日本評論社, 2006.09, A5/148pp. (カプレカ数について)

アドバンスセミナー.

アドバンスセミナーというのは, 文科省主導の理数応援プロジェクトに端を発するもので, 4年生になる前でも希望者はセミナーという形で 指導を受けることができるというものです. (卒業要件には含まれない単位が取得できるようです.) いわゆる自主ゼミというものですので, 余り参考にならないかもしれませんが 扱った/扱う文献を列挙しておきます. 年度をまたいで同じ本であることもあります.

2018年度
*~桂 利行: 代数学1 群と環, 東京大学出版会, 2004年03月19日, ISBN:978-4-13-062951-5, A5/136頁. (3年生, 4月から)
2017年度
佐藤 肇: リー代数入門 -線形代数の続編として-, 裳華房, 2000年10月, ISBN 978-4-7853-1523-8, A5判/118頁. (3年生, 4月から, 21ページまで)
斎藤 秀司: 整数論, 共立講座 21世紀の数学 20, 共立出版, 1997年05月, ISBN 978-4-320-01572-2, A5/248 pp. (3年生, 4月から, 14ページまで)
*~沼田泰英: 集合と写像と関係のノート (unpublished), 81ページ. (2年生, 10月から)
2016年度
~萩田真理子: 暗号のための代数入門 (コンピューターサイエンス・ライブラリー 5), サイエンス社, 2010.12.10 ISBN 978-4-7819-1268-4, A5/208pp. (2年生, 4月から56ページまで)
2015年度
樹下 真一: 位相幾何学入門, 培風館, 2000/9, 139ページ, ISBN-13: 9784563002923 (2年生, 4月から9月まで.1.5節まで)
Qing Liu, Algebraic Geometry and Arithmetic Curves, Oxford University Press, June 29 2006, 600 pages, ISBN-13: 978-0199202492 (3年生, 6月から 2015年1月まで. 1章のみ.)
2014年度
新井 敏康: 数学基礎論, 岩波書店, 2011/5/19, 550ページ. ISBN-13: 978-4000055369. (1年生, 10月から1月まで, 1章)
Ireland, Rosen: A Classical Introduction to Modern Number Theory, 1995, GTM 84, Springer. 394ページ, ISBN 0-387-97329-X. (2年生, 10月から(2015年)5月まで, 8章まで)
高橋 礼司: 線型代数講義 現代数学への誘い, 日本評論社, 2014.07, A5/368pp, ISBN:978-4-535-78569-4. (2年生, 10月から2015年12月まで, 21章まで)
~初等ガロア論, unpublished note. (2年生, 2名, 4月から9月)

+は現在進行中のもの. ~は複数名で行なったもの.

希望者が定員を超過した場合.

希望調査において, 定員を超過したことは今の所ありませんが, 万が一, 希望者が定員を超過した場合は, 3年生前期まででの取得単位数が多いものを優先します. タイブレーカーは, 語学の取得単位数とします.

補足

卒論などのために必要な技術的なメモはこちらにあります.

修士課程のセミナーについて.

大学院修士課程への進学を考えている人も多いと思います. 修士課程でのセミナーでは, 4年生のセミナと同様, テキストを読んでもらいます. 状況によっては, 4年生のセミナーを聞いてもらうこともあるかもしれません. テキストを読み終えたら, 修士論文に取り組みます. 修士論文のテーマなどは, テキストを読み進めていく過程で徐々に固めていく事になると思います.

4年生で学んだことを更に深く掘り下げ学べるよい機会だと思いますし, 例えば, 教員免許を取得しているのであれば その免許が専修免許に書き換わるなどのメリットもあります.

修士のセミナーで扱ったテキスト

以下に過去に修士のセミナーで扱った(もしくは現在扱っている)テキストを列挙しておきます.

2019年度
2018年度
*Bruce E. Sagan : The Symmetric Group --- Representations, Combinatorial Algorithms, and Symmetric Functions, Graduate Texts in Mathematics Volume 203 2001, Springer, ISBN: 978-1-4419-2869-6 (Print) 978-1-4757-6804-6 (Online), 238ページ. (M2. M1からの続き, Chap 4.8から)
日比 孝之 (著): グレブナー基底 (すうがくの風景) , 朝倉書店, 2003/06, ISBN:978-4254115581, 193ページ (M2. M1からの続き, 5.2章から)
草場 公邦: 行列特論 (基礎数学選書 21), 裳華房, 1979, ISBN-10: 4785311231, ISBN-13: 978-4785311230 226ページ. (M1. B4からの続き 109ページから)
2017年度
*Bruce E. Sagan : The Symmetric Group --- Representations, Combinatorial Algorithms, and Symmetric Functions, Graduate Texts in Mathematics Volume 203 2001, Springer, ISBN: 978-1-4419-2869-6 (Print) 978-1-4757-6804-6 (Online), 238ページ. (M1. B4からの続き, Chap 2から)
日比 孝之 (著): グレブナー基底 (すうがくの風景) , 朝倉書店, 2003/06, ISBN:978-4254115581, 193ページ (M1. B4からの続き, 4章から)
中岡 宏行: 圏論の技法, 日本評論社, 2015/12, ISBN-10: 4535786674 ISBN-13: 978-4535786677 487ページ (M2, M1からの続き)
2016年度
中岡 宏行: 圏論の技法, 日本評論社, 2015/12, ISBN-10: 4535786674 ISBN-13: 978-4535786677 487ページ (M2)

+は現在進行中のもの.

博士課程について.

博士課程に進学したいという気持ちがある人は, なるべく早くに相談してください. 研究テーマなどの相談をしなければなりません. また, 私の研究室では, 博士課程の進学には, JSPSの特別研究員DC1に応募している ということを原則とします. (例えば, 国費留学生などで自国によるJSPSの特別研究員相当の研究費などを既に獲得しているなどの事情で, 応募資格上の問題で応募することが困難である場合などについては, この限りではありません) DC1の応募締切は M2の4月末であったと思いますので, 時期などに注意をしてください. 過去の応募書類などはwebにあると思いますので, 興味がある人は事前に見ておくと良いと思います.

博士課程での指導方針で, 私の研究室で特徴的な部分は, 以下の通りだと思います: 国内外を問わず積極的に出張をし外部での研究発表をし情報収集を積極的に行なってもらう/ JSPS特別研究員やその他の外部資金などに積極的に応募してもらう/ 論文をまとめることを常時行ってもらう. これらが可能なように自分の研究を進めてもらいます.


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