最近我々の業界でもポスタ発表が, 多くなって来ました. とはいえ, まだ一般的な方法ではないため, ノウハウが多くありません. そこで, 参考になればと思い, 私がどのようにポスタを作成しているかということを例示します. あくまで私がどのようにポスタを作成しているかということであり, この方法がよいと主張するものではありません.
この文書は取り急ぎ書いたため決して読みやすいものではないですが, ご了承ください.
ここで述べる方法は, ポスターを作成するにあたって,
普段使っているLaTeXでポスターを作る手順の一例を例を挙げつつ 紹介したいと思います.
まず, 原稿に使う原稿を用意します. ここの作業は最終的なポスターの形式によらず, 共通です.
まず数ページ(A4の1段組で4ページくらいが目安かもしれません)くらいの extended abstractを用意します. 使うクラスは何でも良いです. 僕自身は普段amsartを使っているので, amsartを使うことが多いですが, 別にjarticleとかでも良いと思います.
もし元ネタとなる論文がある場合は, それを濃縮します. 例えば, 歴史的な背景を書いていたら, 必要最小限にする. もし証明があるなら削る, どうしても残したいのであればKey lemmaをステートメントだけ 書くようにする. このように内容を精査し, 4ページくらいに収まるようにします. このページ数はあくまで大体です. あとで全体を見ながら内容を調節するので, それほど神経質になる必要はありません.
例えば, Kara et al., ``Theory of Elephant Eggs''という論文の内容をまとめ このような (ソース一式) 原稿を作成します.
ポスターにしやすいように, スタイルを少し変更し, 内容/本文をもう少し詰めます. 具体的には, 次のようなことをします:
\author
,
\address
,
\date
,
\title
,
\maketitle
,
\begin{abstract}..\end{abstract}
,
\tableofcontents
,
などを, 一旦%
でコメントにします.
\documentclass{jsarticle}
を選びます. (別にjsarticleでなくてもよいですが, 幅の広めのスタイル良いと思います.)
必要に応じて,
\usepackage{amsthm}
,
\usepackage{amsmath}
などを付けくわえます.
一旦コンパイルをして, エラーが出ないことを確認します.
つぎに二段組にします.
\documentclass{jsarticle}
の直後に,
\usepackage{multicol}
を書きます.
\end{abstract}
の直後あたり)
に
\begin{multicols}{2}
をいれ,
\end{document}
の直前に
\end{multicols}
を入れ二段組にします.
コンパイルがエラー無く通るか一旦確認します.
コンパイルが通ったら内容のシェイプアップをします. 文章による表現をなるべくなくします. じっくり読まないと理解できないような表現を少なくし, ぱっと見ることで理解できるような表現に変更します. 例えば次の点に注意して内容を精査します:
\begin{enumerate}\item .. \end{enumerate}
,
\begin{itemize}\item .. \end{itemize}
などを使って箇条書きにできないか考えます.
\implies
)を使うなどして,
簡潔にできないか考えます.出来れば(参考文献を除いて), 1ページ強に収まるように調整をします. そのために,
文章は減らしますが, なるべく, 図や表を残すようにします.
参考文献と連絡先さえ書いておけば, 必要な情報は後からでも得られるはずなので, 大胆に内容を削ってしまって大丈夫です.
スタイルをポスター用に変更し, 仕上げをします. 使用するスタイルによって行う作業は 細かいところは異なると思います. ここでは, なるべく, 新しいことを覚えず, そこそこのポスターを作るために, このスタイルファイルを使います. このスタイルファイルは, 色を付けポスターっぽくするためのスタイルファイルです. 組版は基本的に変更しません. geomery.styとmulticol.styを使いA4版でポスターっぽい原稿を作り, simpleposter.styで色を付けそれっぽく見せるという作戦です. A4版で通常通り原稿を作成し拡大印刷すれば, それなりに調度良い大きさになりますので, マージンの調整のためだけにgeomery.styは使います. 用紙サイズはA0にせずA4サイズのままで原稿を作成します. 下手にA0の原稿を作成するよりは, 慣れている分作業が捗るということ, picture環境による図を流用できるということなどが, 主な理由です.
スタイルをポスター用に変更し, とりあえず コンパイルできるようにします. 具体的には, 次のことをします.
\documentclass{jsarticle} \usepackage{multicol} \usepackage{amsthm} \usepackage{amsmath} \usepackage{amssymb} \usepackage{url} \usepackage[top=-2mm,left=10mm,right=10mm,bottom=10mm,noheadfoot,driver=none]{geometry} \usepackage[dvipdfmx]{graphicx,color} \usepackage{simpleposter}
とりあえずコンパイルが通るか確認します. 重複して定義しているもの, 重複して読み込んでいるスタイルなどがあると, エラーが出るので 適宜修正します.
次にタイトルなどを 入れておきます:
\begin{document}
の直後に,
\date{}
\title{}
\author{}
など使って,
タイトルなどを定義します.
(共著の場合は
\author{1st Author \and 2nd autho}
のように
\and
で区切って列挙します.)
そのあとに\maketitleを入れてタイトルがでるようにします.
\maketitle
の直後に,
\begin{abstract} ... \end{abstract}
で概要を書きます.
\newtheorem
の前に
\theoremstyle{upshapetheorem}
をいれて, 定理環境のスタイルを揃えておきます.
とりあえずコンパイルが通るか確認します. コンパイルが通ればとりあえず見栄えはまだ気にする必要はありません.
もし, 要約と書いてある部分をAbstにしたければ
\renewcommand{\abstractname}{Abs}
を
\begin{document}
の前に
いれます.
参考文献と書いてある部分を, Referencesに変更したければ,
\renewcommand{\refname}{References}
を
\begin{document}
の前にいれます.
だいたい このような (ソース一式) 原稿になります. とりあえず, 二ページ目以降の組みはめちゃくちゃかもしれませんが 気にする必要はありません.
原稿が, 一枚に収まるように調整します.
\documentclass{jsarticle}
の代わりに,
\documentclass[8pt]{jsarticle}
や
\documentclass[9pt]{jsarticle}
のようにやって文字のサイズを小さくすることで,
ポスターに収めるという方法もありますが,
あまり良い方法ではありません.
文字のサイズを小さくすると,
ポスターを掲示した際に読みにくくなります.
文字を小さくしないと入り切らないときには,
ただ単に内容が絞りきれておらず,
焦点がぼやけたポスターになっていることが
往々にしてあります.
本文のフォントサイズを落とすことは,
最終手段だと思ってください.
まずは, 内容を触っていきます.
まず,
\begin{figure}
\end{figure}
や
\begin{table}
\end{table}
などを
\begin{center}
\end{center}
に変更します.
ポスターの場合は図や表の入れる位置は,
自分でコントロールする必要があるからです.
またこれらに付随する
\caption
,
\label
というコマンドなどもコメントにしておきます.
また, うまく図や表の位置などを移動し,
図や表の番号を引用しなくても良いように変更します.
本文の書き方を工夫し本文が一枚に収まるように工夫します. 特に次のようなことに注意します.
もし, 画像のサイズを変更することで改行のタイミングが変わりうまく行く, ということがあれば, 画像のサイズを一回り小さくするなどします.
不必要な参考文献があれば, 削除します.
もし, ページに収まっていない場合は, 参考文献の書き方を変更し, 著者, 雑誌名, 号巻, 年, ページ. といった最小限のものに変更し スペースを節約します.
もし, まだページに収まっていないときは, 次を試します.
\begin{document}
の直前に
\renewcommand{\abstractFontSize}{\footnotesize}
をいれ, 概要のフォントサイズを下げます.
\footnotesize
を
\begin{thebibliography}{99}
の直前に入れて参考文献のフォントサイズを下げます.
\begin{abstract}
の直前や
\end{abstract}
の直後に,
\vspace{-4ex}
を入れることで,
前後のスペースを調整します.
(-4exは適宜状況によって変更します.)
もしこれでも1ページに収まらなければ, 全体のフォントサイズを落とします.
だいたい このような (ソース一式) 原稿になります. これでだいたいポスターになっています. 一旦A4サイズでプリントアウトして眺めてみるとよいでしょう.
最後に, 見栄えの調整を行います.
まず, 改行やスペーシングを調整します. ただし, あまり細かいところまでは気にしないことにするのが吉です.
\columnbreak
を使って改行をします.
\vfill
(前後に空行を入れる)
を入れるなどして垂直のスペーシングを調整します.
\hfill
を入れるなどして左寄せにするなど
水平方向のスペーシングも調整します.
\documentclass[11pt]{jsarticle}
に変更しフォントサイズを大きくすると良いかもしれません.
一旦プリントアウトして確認します. 少し遠目で眺めて, 全体のバランスなどを見ます. また, 実際に自分がそのポスターを使って説明することを想像し, その手順としっくりくるか確認します. 必要に応じて, 順番をかえるなどし, 発表しやすい形に調整します.
強調したいところがあれば,
適宜 \alert{}
を使い強調します.
余力があれば, 配色などをいじっても良いかもしれませんが, 通常は素人が下手にいじらないほうがバランスよく仕上がります. 必要がない場合は無理に配色を変更する必要はありません.
もしかしたら, 背景に大学のシンボルマークなどを入れると良いかもしれません. 背景として入れるなら, 配色をそれにあわせて変更したほうが良い場合があります. 名前の横にワンポイントで入れる時などは配色までいじる必要は ないと思います.
例えば,
信州大学のスクールカラーが緑なのでそれに合わせて,
配色のテーマをいじると
この
ようになります.
(ソース一式).
プリアンブルで,
\nu@color@theme@Base@BK
などを再定義して配色を変更しています.
その上で背景に画像を入れると,
この
ようになります.
(ソース一式).
\usepackage{wallpaper}
と
\ThisCenterWallPaper{0.95}{dummy-1.eps}
が増えており,
背景画像dummy-1.eps
を取り込んでいます.
(こちらにまとめた方法で背景画像を取り込んでいます. 信州大のシンボルマークを使った時のメモをかいてあります.)
あとはPDFを作成し, A0に印刷をすれば, 終わりです.
dvipdfmx x2.dvi
のような形で, いつも通り,
dviをpdfにコンパイルします.
dvipdfmx -p "2381.08,3367.88" -x 4in -y 4in -m 4 x2.dvi
の様な形でオプションをつけて拡大しdviをpdfにコンパイルします.
ソースをいじる必要はありません.
これが出来上がったポスターのサンプル をA0に拡大しpdfにしたものです. ソース自体(ソース一式)は何も変更していません.
a0poster.styなどをつかって,
最初からA0で組みつつポスターを作るという方法もありますが,
全体のバランスや手間を考えると
A4でいつもどおり作っおき,
最後にdvipdfmxで拡大しA0にする, もしくは,
A4のacrobatなどのpdfビューアで拡大というのが
やりやすと僕は思うので,
その方法で説明をしました.
This page: https://bit.ly/2PdcQfn
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