確率・
統計・
行列ワークショップ
松本
2017
JSPS科研費 [1], [2] の研究の一環として,
2017年11月9日 (木) から 10日 (金) まで,
信州大学理学部数学科にて,
小さな研究集会を行いますのでご案内致します.
なお, 本研究集会の開催にあたっては,
下記科研費[1], [2]に加えて信州大学理学部学部長裁量経費[3]の支援も受けています.
- [1] JP25220001 基盤研究(S) 計算代数統計による統計と関連数学領域の革新 (研究代表者 竹村彰通)
- [2] JP16H02792 基盤研究(B) 期待オイラー標数法の深化と実用化,および関連する数理の展開 (研究代表者 栗木哲)
- [3] 平成29年度信州大学理学部 学部長裁量経費 「数理科学を基点とする自然科学諸分野の研究交流促進と創発」
Venue
会場は, 信州大学理学部 (松本キャンパス) A棟4階401号室(数理・自然科学合同研究室)です.
信州大学までのアクセスなど
Schedule
2017年11月9日 (木)
- 13:30--14:30
- 栗木哲(統計数理研究所)
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クロネッカー積構造を持つ分散共分散行列の最尤推定量の存在・非存在.
(Mathias Drton 氏との共同研究)
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ベクトル値ガウス分布に従う n 個の iid サンプルから,その分散共分散行列を最尤推定する問題を考える.分散共分散行列に何も構造がない場合は,尤度関数が有限の最大値を持つ(すなわち,MLE が存在する)ための必要十分条件は,サンプル数 n が行列サイズ以上であることである.しかし,分散共分散行列が構造を持ち,より少ないパラメータで記述されている場合はその限りではない.本講演では,分散共分散行列が m1 x m1 行列と m2 x m2 行列のクロネッカー積である場合を扱う.MLEの存在・非存在は,m1 x m2 x n テンソルのある種のランクで特徴づけられ,とくに n=2 の場合は,そのランクが整数計画の解として陽に与えられることが示される.なお具体的に与えた m1, m2 については,このテンソルのランクはグレブナー基底計算でも具体的に求めることができ,研究の過程ではこの計算を多く行った.
本問題とマトリクスペンシル(行列束),制御理論における可制御・可観測性との関係についても説明する.
- 15:00--16:00
- 高山 信毅(神戸大学)
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non-central complex Wishart 行列の最大固有値の CDF の数値計算.
(F.Danufane, 小原功任, C.Siriteanu 氏との共同研究)
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M. Kang and M.-S. Alouini, “Largest eigenvalue of complex Wishart matrices and performance analysis of MIMO MRC systems,” IEEE Journal on Selected Areas in Communications, vol. 21, no. 3, pp. 418–426, 2003.
が与えた non-central complex Wishart 行列の最大固有値の CDF の行列式公式および微分方程式の数値解析を用いて CDF を計算する方法を報告する. 現状では 5x100 アンテナでのシミュレーション(5x5 Wishart 行列)が可能である.
- 16:30--17:30
- 間野修平(統計数理研究所)
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A超幾何系とランダムYoung図形からの正確な抽出
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統計的検定において与えられた分布からの抽出が必要になることがある.A超幾何級数を正規化定数とする離散確率函数からの正確な抽出法を示し,ランダムYoung図形への応用を紹介する.Jack多項式に関する抽出法はBlackwell-MacQueenの壺として知られるが,その種の方法は無限交換可能性を要する.紹介する方法にはその様な制約がない.
2017年11月10日 (金)
- 9:40--10:40
- 白井朋之(九州大学)
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行列式点過程とその周辺の話題
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Gaussian Unitary Ensemble (GUE) や Ginibre Ensemble といった
ガウス型ランダム行列の固有値のなす$\mathbb{R}$や$\mathbb{C}$上のランダム点配置(点過程)の確率分布は
行列式の構造をもつ.その構造を抽象化して得られる点過程が行列式点過程である.
数学・物理の色々な所にあらわれるため詳しく研究されてきたが,
最近では機械学習などにも応用されている.
本講演では行列式点過程の背景といくつかの例を述べるとともに,
その周辺にあらわれるいくつかの話題に触れる予定である.
- 11:10--12:10
- 松本詔(鹿児島大学)
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Weingarten calculus for Haar distributed matrices and Wishart matrices.
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コンパクト線形 Lie 群のHaar測度に従うランダム行列に対し, その行列成分の混合モーメントを記述するのが Weingarten calculus である. 混合モーメントは, Weingarten 関数と呼ばれる対称群上の関数により記述される. 本講演では以下の3つの内容について述べる. 1: ユニタリ群などのコンパクトLie群や対称空間に対するランダム行列の Weingarten calculus. 2: Weingarten 関数の組合せ的表示について(B. Collins 氏との共同研究). 3: 逆 central Wishart 行列の Weingarten 関数.
- 14:00--15:00
- 土谷隆(政策研究大学院大学)
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対称錐計画問題に対する新しい多項式時間解法:
Chubanov の正射影スケーリング法とその拡張
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近年、線形計画問題に対し、楕円体法、内点法に続く第3の多項式時間解法である正射影スケーリング法が Chubanov によって提案された。Chubanov の方法は正射影とスケーリングを繰り返して実行可能解の存在する領域を狭めていくものである。本発表では正射影スケーリング法を紹介し、その半正定値計画問題や2次錐計画問題を含む対称錐計画問題への拡張について述べる。本発表は、ロウレンソ・ブルノ (成蹊大学)、北原知就(東京工業大学)、村松正和(電気通信大学)との共同研究によるものである。
- 15:30--16:30
- 謝賓/Xie Bin (信州大学)
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The fluctuations for the evolutional models of
two-dimensional Young diagrams
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本講演では,動的2次元ヤング図形のモデルに関する非平衡揺動を考
える.2次元ヤング図形の時間発展モデルは2010年に舟木と佐々田によって界面モ
デルの一種として導入された.彼らはこのモデルについて,適切な時空のスケール
変換の下で流体力学極限を論じた.本講演では,動的2次元ヤング図形のモデル
に対して,その流体力学極限の周りの非平衡揺動問題を考察し,その極限を記述
する線形確率偏微分方程式を導いたことを紹介する.また,得られた確率偏微分方
程式の不変測度をも紹介する.なお,本講演の内容は,T.Funaki, M. Sasada,
M. Sauerとの共同研究に基づく.
世話人
竹村彰通 (滋賀大学・統計数理研究所), 栗木哲 (統計数理研究所), 沼田泰英 (信州大).
事前の参加申し込みなどは必要ありません.
不明な点などは沼田泰英(信州大学理学部数学科,
nu at math.shinshu-u.ac.jp) まで.
11月9日 (木)の夕刻に懇親会を行います. 人数把握のため,
懇親会に出席する予定の方は11月5日 (日) までに沼田までご連絡下さい.