2021年3月4日(木) [2020年度第5回数理科学談話会]
15:00 - 16:30
データサイエンスの中の数学(数学科向けデータサイエンス入門)
講演者:臼井 耕太 氏
(Aflac 生命保険株式会社/Hatch Insight 株式会社)
本講演では,主に学生さんに向けて,大学で学ぶレベルの数学がデータサイエンスや機械学習においてどのように活躍するのかを具体例をあげながら紹介したいと思います.
講演者は,データサイエンスの専門教育を受けたことがあるわけではなく,2017年までは数理物理学のポスドク研究者をしていました.その意味で,データサイエンティストとしてはまだほんの駆け出しです.
数学を専門に学んだ皆さんが,もし仮に将来データサイエンティストとして活動する場合には,講演者のように「現代数学は人より少し知っているが,計算機科学や機械学習はほぼ素人」という状態で始めることになると思います.
そのような中でデータサイエンティストとして活動していく上で,数学科で学ぶような抽象的な数学を理解していることがどう役に立つのかについても,講演者の経験からくる私見を交えながらお話ししてみたいと思います.
世話人:佐々木格(理学系)
会場:Zoomによるオンライン講演会
2021年2月4日(木) [2020年度第3回数理科学談話会]
15:00 - 16:30
2021年2月5日(金) [2020年度第4回数理科学談話会]
15:00 - 16:30
《人物に学ぶ数学と数学史》2回講演
講演者:高瀬正仁 氏
(九州大学・元教授)
==第1日==
西欧近代の数学は微積分と数論とともに始まりました。デカルトとフェルマがそれぞれ独自に考案した接線法(曲線に接線を引く方法)はライプニッツとベルヌーイ兄弟(兄のヤコブと弟のヨハン)に継承され、オイラー、ラグランジュを経てコーシーの手にわたって今日の微積分の原型ができました。曲線の理論は関数の発見を誘い、解析学の成立をうながしましたが、数学の視点に立つと、この間に一貫して「0を0で割る」というアイデアが生きて働いています。人と人を結ぶ濃厚なつながりも認められますので、人と数学の両面を合せて形成過程をたどってみたいです。
==第2日==
数論にはフェルマとガウスという二つの泉があります。17世紀のはじめ、フェルマは古代ギリシアのディオファントスの著作『アリトメチカ』のラテン語訳を読み、欄外に数の理論に関する48個のメモを書きました。数論はこの「欄外ノート」とともに始まりました。それから100年余ののちにオイラーが目を留めて、フェルマが発見した命題の数々に証明を与えることに成功し、これによって数論は数学の有力な一領域になりました。一段とめざましい印象を誘われる命題は「直角三角形の基本定理」と「フェルマの小定理」です。1801年になるとガウスの著作Disquisitiones arithmeticaeが現れて、相互法則の探究という新たなテーマが提示されました。二つの数論のそれぞれの性格を考察し、似ているところと似ていないところを語りたいと思います。
==附録==
日本の近代数学のはじまりと和算の運命
・Mathematicsが「数学」になり、Arithmeticが「算術」になったころ
・4人の和算家の運命-岩田好算、高久守静、関口開、萩原禎助。
世話人:佐々木格(理学系)
会場:Zoomによるオンライン講演会
2021年2月2日(火)
16:00 - 17:00
2020年度第2回数理科学談話会
量子渦から見た素粒子論
講演者:衛藤 稔 氏
(山形大学・教授)
素粒子論に限らず物理学全体において対称性は最も基本的な概念です。系が持つ対称性は一般に群で表されますが、素粒子論では特にリー群が重要で、素粒子の種類や相互作用などを理解する上で大きな役割を果たすことはよく知られています。一方で、対称性は自発的に破れても良く、その際に一般に位相欠陥が生じます。本公演では、位相欠陥の一つとして量子渦に焦点を絞り、素粒子論において量子渦が関係する現象をいくつか紹介します。1)カラー超伝導の量子渦、 2)冷却原子気体 BEC と量子渦、 3)ブレーンワールド模型×大統一理論と量子渦、 4)拡張標準模型における量子渦。一見すると無関係に見える「カラー超伝導・冷却原子気体・ブレーンワールド・大統一理論・拡張標準模型」ですが、量子渦に着目すると緩く繋がっている、ということをお伝えできたらと思っています。
キーワード:量子渦
講師の専門分野:素粒子論
世話人:奥山 和美(理学系),川村嘉春(理学系)
会場:Zoomによるオンライン講演会
2020年12月14日(月)
17:00 - 18:00
2020年度第1回数理科学談話会
弱い重力予想とAdS時空での極限ブラックホール
講演者:中山 優 氏
(立教大学・准教授)
最近、「無矛盾な量子重力理論において重力は電磁気力より
弱くなくてはいけない」という弱い重力予想が提案された。この講演では
反ドジッター時空での弱い重力予想と極限ブラックホールの奇妙な性質の
関係について議論する。反ドジッター時空では弱い重力予想は共形場理論
が持つべき性質として理解できる。一方、共形場理論が満たすべき共形
ブートストラップを用いると、小さな荷電ブラックホールはホログラフィー
と矛盾する事がわかる。これは、量子補正によってブラックホールのエネルギー
が変更されるか弱い重力予想が示唆するように荷電ブラックホールが不安定で
なければならないことを意味する。
世話人:奥山 和美(理学系)
会場:Zoomによるオンライン講演会