数理科学談話会
2022年2月10日(木) [2021年度第7回数理科学談話会]
16:50 - 18:00
ベイズ統計理論に基づくヒト認知機能の数理モデリングと統計解析
講演者:朝倉 暢彦氏
(大阪大学 数理・データ科学教育研究センター)
現代のデータサイエンスは,古典的な統計理論では想定されてこなかった自明でないデータ取得環境から得られる非構造化データを扱う場面が多い.このような状況では,データ取得環境とそれに起因するあらゆる不確定性のモデリングがデータ解析に先立って必要となる.データサイエンスでは,このデータ生成過程の統計モデリング,すなわちデータ生成モデルの構築と不確定性の定量的評価をベイズ統計理論の枠組みで行うのが主流のアプローチとなっている.さらに,このような観点からからデータサイエンスの課題を考えてみると,それは不確定性をもったデータからの有効な情報の抽出,その確からしさの定量的な評価に基づく解析対象の理解,およびデータを取り巻く環境において適切な意思決定を導くことと言える.
本講演では,このデータサイエンスの課題が,ヒトの認知システムにおいても解決すべき同型の課題となっており,データ生成モデルを用いたベイズ推定というデータサイエンスの枠組みがヒト認知機能のモデリングにも極めて有効であるということを講演者の研究事例を踏まえて説明する.
世話人:宮西 吉久 (理学系)
講師の専門分野:超弦理論,代数解析学
会場:オンライン(Zoom)
2022年1月11日(火) [2021年度第6回数理科学談話会]
16:50 - 18:00
素粒子ニュートリノで宇宙の謎を探る
講演者:淺賀 岳彦 氏
(新潟大学理学部)
素粒子「ニュートリノ」は、2015年にノーベル物理学賞を受賞された梶田隆章さんの研究でご存知かもしれません。梶田さんが発見したニュートリノ振動現象は、ニュートリノが極微の質量を持つことを示し、素粒子物理学分野に衝撃を与えました。本講演では、ニュートリノの極微質量の起源を探究することにより宇宙物理における謎を解明する研究について紹介します。特に、宇宙暗黒物質、および宇宙反物質の問題解決に向けた取組について、最近の進展も含めお話しします。
キーワード:素粒子ニュートリノ, 宇宙暗黒物質, 宇宙反物質
講師の専門分野:素粒子理論
会場:Zoom オンライン
2021年12月21日(火) [2021年度第5回数理科学談話会]
17:00 - 18:00
S進タイル張りの絶対連続回折スペクトルについて
講演者:永井 康史 氏
(信州大学全学教育機構)
タイル張りは幾何的な対象だが、数学の他の分野や物理や化学と関係がある。この談話会では、準結晶との関わりからタイル張りを研究する。この文脈では、タイル張りに対応して定まる「回折測度」の性質が重要となる。これはユークリッド空間上の正の測度だが、これをルベーグ分解した時の絶対連続部分がいつゼロになりいつゼロにならないかが問題となる。この講演では、S進タイル張りというタイル張りのクラスの一部分に対して、回折測度の絶対連続部分がゼロとなるという結果を紹介する。
会場:Zoom オンライン
2021年12月13日(月) [2021年度第4回数理科学談話会]
15:10 - 16:00
DNAを用いた個人識別
講演者:原山 雄太 氏
(長野県警察本部刑事部科学捜査研究所 法医係)
DNAを用いた個人識別が世界で初めて行われてから30年以上経ち,現在,DNAを用いた個人識別は法科学分野において重要な役割を果たしている。PCR法をはじめ、様々な技術の発展により、DNAによる個人識別能力は向上し続けている。
法科学分野で用いられているDNAを用いた個人識別の方法や災害などでの身元確認の方法について紹介し,これまでに行ってきた研究について紹介する。
キーワード:個人識別,DNA,遺伝学,犯罪捜査
講師の専門分野:個人識別,DNA鑑定,血液型鑑定
会場:Zoom オンライン
2021年11月30日(火) [2021年度第3回数理科学談話会]
16:50 - 18:00
4次元$Z_2$格子ゲージ理論における非可逆なトポロジカル欠陥
講演者:山口哲 氏
(大阪大)
近年、トポロジカルな欠陥の見方を用いた、対称性の概念の拡張に
関する研究が盛んに行われ、大きく発展しようとしている。その一つの方向が、
非可逆対称性である。これまで非可逆対称性は2次元の理論で主に研究され、
大きな成果を挙げてきたが、それに比べて4次元での非可逆対称性は
理解が進んでいない。今回、我々は4次元の純粋$Z_2$格子ゲージ理論における
トポロジカルな欠陥を研究した。この理論は、1形式$Z_2$中心対称性と
Kramers-Wannier-Wegner(KWW)双対性を持っている。我々は、Aasen, Mong, Fendley
が2次元Ising模型で構成したのと同様の方法で、これらの$Z_2$対称性とKWW双対性に
対応するトポロジカルな欠陥を構成した。その結果、KWW双対性欠陥は非可逆であることが判明した。
つまり、この理論のKWW双対性は従来の意味での対称性ではないことが分かった。また、
我々はこれらのトポロジカル欠陥の間のジャンクションを構成し、それを用いて交差関係式を
導出した。これらの交差関係式を用いて、これらのトポロジカル欠陥の配位の期待値をいくつか計算した。
キーワード:非可逆対称性、トポロジカル欠陥
講師の専門分野:素粒子理論、超弦理論、場の理論
会場:Zoom オンライン
2021年11月16日(火) [2021年度第2回数理科学談話会]
17:00 - 18:00
モジュラー曲線の相対的副冪単基本群について
講演者:佐久川憲児 氏
(信州大学教育学部)
リーマン面のモジュライのエタール基本群は、有理数体の絶対ガロワ群の「巨大な」連続作用を持つ興味深い副有限群である。一方でこのガロワ表現は極めて複雑で、直接解析するのは非常に困難である。この複雑なガロワ表現から興味深い情報を取り出す一つの方法として、相対的副冪単完備化を取る、という方法がある。本講演では、相対的副冪単完備化の定義から始めて、リーマン面のモジュライの最初の興味深い例として3点抜き射影直線の場合に知られている結果を紹介する。更に、モジュラー曲線の場合に講演者が得た結果について報告する。
会場:Zoom オンライン
2021年7月20日(火) [2021年度第1回数理科学談話会]
17:00 - 18:00
大域解析学: 線形作用素のスペクトル理論とその周辺
講演者:宮西吉久 氏
(信州大)
会場:Zoomによるオンライン講演会